日本大百科全書(ニッポニカ) 「伊達(市)(北海道)」の意味・わかりやすい解説
伊達(市)(北海道)
だて
北海道南西部、内浦(うちうら)湾(噴火湾)に臨む農村都市。1972年(昭和47)市制施行。2006年(平成18)、有珠(うす)郡大滝村(おおたきむら)を編入したが、間に有珠郡壮瞥(そうべつ)町をはさむ。JR室蘭(むろらん)本線、国道37号が内浦湾に沿って並行して走り、国道453号が北東に伸びている。道央自動車道伊達インターチェンジがある。1870年(明治3)仙台藩の一門亘理(わたり)領主伊達邦成(くにしげ)が家臣250人と入植した地。北海道としては気候温暖であり、ヨーロッパ式農法・農産加工の採用で開拓は成功し、模範的農村として開拓使の表彰を受けている。現在は稲作のほか、ジャガイモ、アスパラガス、サトウダイコン、ホウレンソウ、キャベツ、トマト、リンゴ、ナシなど多様な作物と早場蔬菜(そさい)栽培に特色をもち、冬季もビニルトンネルを利用した生産物は「伊達もの」として札幌、室蘭市場で好評を得ている。ホタテガイ、コンブ、ウニ、カレイなどの漁業もある。
商業地区は伊達紋別駅から市内を貫流する気門別川沿いに開け、入植時の地割によりいくぶん城下町的おもかげを残し、工業では北海道電力伊達火力発電所や、製糖、金属、農機具の工場が立地している。発電所隣接地に伊達長和工業団地が造成された。支笏洞爺(しこつとうや)国立公園への入口の一つで、館山(たてやま)公園からは洞爺湖の外輪山を一望に収めることができる。北西部は有珠山の南斜面にあたる。また有珠海水浴場があり、北海道の湘南(しょうなん)といわれる保養地区になっている。有珠の善光寺は幕藩時代、蝦夷三官寺(えぞさんかんじ)の一つで、5月の桜の季節には多くの花見客を集めている。なお、境内地は善光寺跡として国の史跡に指定されている。伊達開拓記念館は伊達邦成旧邸で、同家の美術品と開拓関係資料が収められていたが2017年(平成29)11月閉館した。面積444.21平方キロメートル(一部境界未定)、人口3万2826(2020)。
[奈良部理]
『『伊達町史』(1972・伊達町)』