伊勢原(市)(読み)いせはら

日本大百科全書(ニッポニカ) 「伊勢原(市)」の意味・わかりやすい解説

伊勢原(市)
いせはら

神奈川県中央部にある市。1971年(昭和46)市制施行。小田急電鉄が通じ、国道271号(小田原厚木(あつぎ)道路)、246号が通じる。丹沢(たんざわ)山地東部の大山(おおやま)(雨降山(あふりやま))の南東斜面から、その侵食谷の鈴川、渋田(しぶた)川、歌川がつくった沖積低地に広がる。市域は早くから開かれ、伊勢原八幡台(はちまんだい)石器時代住居跡(国指定史跡)や伊勢原、三ノ宮両古墳群をはじめ、縄文、弥生(やよい)、古墳時代の遺跡が多く、三ノ宮は第二次相模(さがみ)(神奈川県)国府の地とされ、付近一帯に条里型水田の遺構が広く分布する。鎌倉初期からは三浦氏の一族岡崎氏が岡崎城に拠(よ)り、室町時代には糟屋荘(かすやのしょう)は扇谷(おうぎがやつ)上杉氏に属し、その家臣太田道灌(どうかん)が謀殺された地として知られ、その墓が上粕屋にある。江戸初期には伊勢商人によって伊勢原に市場が開かれ、矢倉沢(やぐらさわ)往還宿場町、山岳信仰の山、大山登山の門前町としてもにぎわった。いまも町並みにこれらのおもかげや、当時から続く老舗(しにせ)や旅館(講中宿(こうじゅうやど))がみられる。昭和初期に小田急電鉄が開通して東京と直結し、第二次世界大戦後は県営伊勢原工業団地や住宅団地が造成され、京浜の衛星都市化が進んだ。近郊はイチゴナシブドウ、クリ、カキミカンなど夏、秋の味覚の産地としても有名で、観光農園も多い。

 大山には阿夫利神社(あふりじんじゃ)や大山寺(たいさんじ)(大山不動)があり、三ノ宮の比々多神社(ひびたじんじゃ)では蟇目(ひきめ)神事(悪魔払い)がいまも行われる。北西日向薬師(ひなたやくし)には鉈彫(なたぼ)りの薬師三尊像をはじめ多くの国指定重要文化財があり、また桜の名所として知られる。郷土玩具(がんぐ)として大山ごまなどの木工玩具がつくられている。面積55.56平方キロメートル、人口10万1780(2020)。

[浅香幸雄]

『『伊勢原市史』全9巻(1991~1999・伊勢原市)』


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