デジタル大辞泉
「不知火」の意味・読み・例文・類語
しらぬ‐い〔‐ひ〕【▽不▽知▽火】
九州の有明海や八代海で、夜間無数の光が明滅する現象。漁船の漁火が異常屈折によって光像を作るために起こる。八朔(陰暦8月1日)ごろの月のない夜に多くみられる。《季 秋》「―の見えぬ芒にうずくまり/久女」
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しらぬ‐い ‥ひ【不知火】
〘名〙 九州の八代(やつしろ)海や有明海に夜半点々と見られる怪火。《季・秋》
※河越千句(1470)三「つくし路や都遙に上るらん〈道真〉 しらぬ火見ゆる淀の舟つき〈中雅〉」
[語誌](1)「書紀‐景行一八年五月」の条に、景行天皇九州巡幸の際、航行中に日が暮れたが
火影に導かれて岸に着くことができた。しかし、火の主はわからず、人の火ではないと考え、この地を火の国と呼ぶようになったという。なお、肥の国の
地名伝説としては、
肥前、肥後の「
風土記」に火が天から山に降ったという話もある。この
不審火を「しらぬ火」と呼ぶようになった時期は明確ではないが、中世には一般化していたかと思われる。
(2)→次項「しらぬい」の語誌
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不知火 (しらぬい)
光の異常屈折のために,一点の漁火(いさりび)でも左右に細長くのびて見える現象。九州の八代海(別名不知火海)や有明海で夏の朔日(さくじつ)(旧暦の1日で大潮になる日),特に八朔(旧暦8月1日)によく見られる。この現象は《日本書紀》景行紀にも記され,古くから知られていたが,その正体が不明のまま不知火といいならわされてきた。1937年宮西通可(1892-1962)が現地の観測と室内実験で,不知火現象のおこる機構を説明した。すなわち,所々に澪(みお)(水路)のある遠浅の海で,夜に潮が大きく引いて,干潟と澪が現れている時には,干潟の砂の上の空気は冷たく,澪の上の空気は暖かく温度差が大きくなる。ここに風が吹いていると,たくさん並んだ空気の柱状渦の列ができる。柱状渦の先方に漁火があり,柱状渦の軸方向の手前からその漁火を見ると,柱状渦はレンズの働きをして,一点の漁火でも横に広がった光の列となり,空気の動きに応じて揺れて見えるというのである。
執筆者:畠山 久尚
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不知火【しらぬい】
九州の有明海,八代海などで夜間に見られる光の異常屈折現象。干潟に夜間の放射冷却によって局所的に冷気塊ができるが,海上の気温はこれより高い。このように複雑に存在する密度の異なる気塊が微風に流されて波状に移動すると,光の異常屈折が起こり一つの漁火が無数に見えたり,また消えたりして,〈千灯万火明滅離合〉というような現象を呈する。旧暦の8月朔日(ついたち)に最も著しく現れるが,これは暗夜の大干潮時を利用して漁を行うときの灯火が光源となるもの。
→関連項目不知火[町]|日奈久[温泉]|八代海
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不知火
しらぬい
有明海と八代海の沿岸で真夏にみられる光の異常屈折現象。海上の漁火(いさりび)が実際の数よりもずっと多く明滅し,また横に広がってみえる奇観を呈する。これは夜になって干潟と海面の温度に差が生じると,その上の空気の密度も異なり,微風があると密度の異なる空気の小気塊が湾内を満たし,それらがレンズと同様の作用をして,光が不規則屈折をするために起こる。
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不知火〔プロレス技〕
プロレスの技のひとつ。相手の顎を肩に乗せたまま後方回転でジャンプし、後頭部を床に叩きつける。日本人レスラー、丸藤正道のオリジナル技で、いくつかのバリエーションがある。
不知火(しらぬひ)〔道の駅〕
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世界大百科事典(旧版)内の不知火の言及
【肥の国(火の国)】より
…《日本書紀》には,景行天皇の船が,夜暗くして着岸が困難であったとき,遥かに火の光を見て無事陸に着くことができたので,その地八代県(あがた)豊村を火の国と名づけたという地名由来伝承をのせる。また《肥前国風土記》には,肥君らの祖,健緒組が土蜘蛛(つちぐも)を討ったとき,不知火(しらぬい)が天から降ったため,火の国としたという伝承をのせている。これらから,肥君の本拠,肥後国八代郡肥伊郷付近より起こって肥(火)の国の名がつけられたものであろう(八木田政名《新撰事蹟通考》)。…
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