一重・単(読み)ひとえ

精選版 日本国語大辞典 「一重・単」の意味・読み・例文・類語

ひと‐え ‥へ【一重・単】

〘名〙
① そのものだけで、重なっていないこと。また、そのもの。ひとひら。一枚。
書紀(720)天智一〇年一二月・歌謡「臣の子の八重の紐解く比騰陛(ヒトへ)だにいまだ解かねば御子の紐解く」
花弁が一枚ずつになっていて、重ならないこと。単弁。
源氏(1001‐14頃)幻「ほかの花は、ひとへ散りて、八重さく花ざくら、さかり過ぎて」
③ (単) 裏地のついていない衣服。ひとえぎぬ。ひとえもの。⇔袷(あわせ)。《季・夏》
蜻蛉(974頃)下「ひとへの袖あまたたびひきいでつつ」
④ (形動) まじりけのないこと。純粋であること。そのことに専心すること。また、そのさま。ひたすら。→ひとえに
謡曲卒都婆小町(1384頃)「これぞ悟りの種なると、思ふ心の一重なる、墨の衣に身をなして」
⑤ (副詞的に用いて) 程度が一段と進むさま。いっそう。ひとしお。多く、「今ひとえ」の形で用いられる。
※源氏(1001‐14頃)明石「げに、今ひとへ、しのばれ給ふべきことを添ふる形見なめり」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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