リンゴ酸(読み)リンゴサン

化学辞典 第2版 「リンゴ酸」の解説

リンゴ酸
リンゴサン
malic acid

2-hydroxybutanedioic acid.C4H6O5(134.09).ヒドロキシコハク酸ともいう.不斉炭素1個をもち,D-,L-およびラセミ体の3種類が知られている.【L-リンゴ酸:リンゴ,ブドウなど植物果実中に広く分布している.L-酒石酸をヨウ化水素で還元するか,フマル酸Lactobacillus brevisのフマラーゼを作用させる酵素法により製造する.潮解性のある無色の針状晶.融点100 ℃.140 ℃ で分解.1.595.-2.3°(8.5% 水溶液).比旋光度は,溶媒の濃度によってかわる.pK1 3.40,pK2 5.05.水,エタノールに易溶,エーテルに難溶.130 ℃ でヨウ化水素によりコハク酸になり,20% 水酸化ナトリウムでフマル酸になる.また,酸化銀(Ⅰ)でマロン酸にもなる.清涼飲料水の酸味に用いられる.[CAS 97-67-6]【D-リンゴ酸:比旋光度以外の物理的,化学的性質は,L-リンゴ酸とほとんどかわらない.+2.92°(30% メタノール).[CAS 636-61-3]【D,L-リンゴ酸:フマル酸あるいはマレイン酸に水を付加するか,ブドウ酸をヨウ化水素の存在下で還元すると得られる.融点133 ℃.1.601.pK1 3.40,pK2 5.81.水に易溶.酸の一次標準物質として,おもにアルカリ標準液の標定に用いられる.[CAS 617-48-1]

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「リンゴ酸」の意味・わかりやすい解説

リンゴ酸
リンゴさん
malic acid

オキシコハク酸ともいう。化学式は HOOCCH2CH(OH)COOH 。不斉炭素原子1個をもつので,D体,L体およびラセミ体の3種がある。 l -,D-リンゴ酸は遊離の状態,または塩としてリンゴ,ブドウなどの果実中に存在する。潮解性,無色の針状晶。融点 100℃。比旋光度は濃度によって変化し,希薄水溶液たとえば 8.4%濃度では比旋光度は-2.3゜であるが,34%濃度では0°,70%では+3.3°となる。清涼飲料水の酸味に使われる。 d -,L-リンゴ酸は DL -リンゴ酸を光学分割して得られる。天然には存在しない。融点 98~99℃。 DL-リンゴ酸は融点 133℃の結晶。ハロゲンコハク酸をアルカリで加水分解すると生成する。酸の一次標準物質としてアルカリ標準液の標定に使用される。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「リンゴ酸」の意味・わかりやすい解説

リンゴ酸
りんごさん
malic acid

オキシカルボン酸の一種で、オキシコハク酸ともいう。化学式はHOOCCH(OH)CH2COOHで、分子量は134.09、不整炭素原子を一つもち光学異性体が存在するが、天然には左旋性のL-リンゴ酸がリンゴやブドウをはじめ種々の果実中に広く分布している。潮解性の無色針状晶で、水やエタノールに易溶、エーテルには難溶である。クエン酸回路(TCA回路)の一員で、フマル酸からフマラーゼの作用で生成し、リンゴ酸デヒドロゲナーゼの作用でオキサロ酢酸になる。用途としては、清涼飲料水に酸味をつけたり、二ナトリウム塩が食塩に似た味を呈することから、腎臓(じんぞう)病患者のための無塩しょうゆに用いられる。

[飯島康輝]


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栄養・生化学辞典 「リンゴ酸」の解説

リンゴ酸

 C4H6O5 (mw134.09).

 クエン酸回路の代謝中間体の一つ.リンゴやブドウの果実に存在する.

出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報

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