ヨハネ祭(読み)ヨハネさい(英語表記)Feast of the Nativity of Saint John the Baptist

改訂新版 世界大百科事典 「ヨハネ祭」の意味・わかりやすい解説

ヨハネ祭 (ヨハネさい)
Feast of the Nativity of Saint John the Baptist

バプテスマヨハネの生誕祭。6月24日。ヨハネがユダヤの祭司ザカリヤと妻エリサベツの子としてイエス・キリストより6ヵ月早く生まれ,長じて後,キリストに洗礼を施したことは聖書に詳しく記されている(《ルカによる福音書》1:13~20,《マタイによる福音書》3:13~16ほか)。したがって,クリスマスが12月25日に定められると,彼の誕生日は6月24日の夏至Midsummer Dayの日となった。ヨハネ祭という名称はキリスト教的表現であるが,夏至の祝祭はキリスト教よりはるかに古く,全ヨーロッパで広く祝われた。人々は日増しに天空高く昇りゆく太陽がこの日をもって上昇をやめるのを見て,その前夜に盛大な火をたき,太陽に力を与えようと考えた。同時に,天空をかけめぐり,川や井戸に毒を落とす竜どもをその煙で追い払おうと考えた。ヨハネ祭の祝い方は地方によって異なるが,共通に見られる特徴は,燃料の薪やわらを住民すべてが負担し,戸外で公共の祝火をたくことである。この日は中世以降,年4回の勘定清算日の一つであった。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のヨハネ祭の言及

【休日】より

…その他の異教時代の祝日にもいちいちキリスト教の祝日名がかぶせられた。たとえば,ハローマスは万聖節,キャンドルマスは〈聖マリアの御潔めの祝日〉,古代ローマの春分の日の3月25日は〈受胎告知日〉,夏至は〈洗礼者聖ヨハネの生誕の祝日〉(ヨハネ祭)と呼ばれるようになった。 中世後期になってもなお,遠い父祖から伝わる異教時代の祭りを,農民が教会の庭で思うさま楽しむことができたのは,教会の寛大なはからいによるものであった。…

【夏至】より

…現行の太陽暦では6月21日ころになるが,旧暦では夏至を含む月を5月とするという規則があった。【内田 正男】
[ヨーロッパの民俗]
 太陽神崇拝がゲルマン人の間にあったことはカエサルの記述からも知れるが,キリスト教公認後は早くから夏至は聖ヨハネ祭(6月24日),冬至はクリスマスにとって代わられた。しかし聖ヨハネ祭の風習は古い伝統的なものを数多く残している。…

【火】より

…詩人W.ブレークは怒りを,S.フロイトはリビドーを火にたとえ,またW.B.イェーツは想像力を火に象徴させている。
[西洋の民俗]
 ヨーロッパでは古くから聖ヨハネの祝日(ヨハネ祭,6月24日)やクリスマス(12月25日),十二夜,四旬節など季節の祭りに祝火を焚く習慣がある。祝日の前夜に人々が丘や広場に集まり,火壇を作ってこれを燃やし,子どもが火の上を跳んだり歩いたりして無病息災を願った。…

※「ヨハネ祭」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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