マタイ(英語表記)Matthew

翻訳|Matthew

精選版 日本国語大辞典 「マタイ」の意味・読み・例文・類語

マタイ

(Matthaeus の近代中国訳の「馬太」に由来するか) イエスキリスト十二使徒一人カペナウムの取税人だったが、イエスの弟子となり、新約聖書の「マタイによる福音書」を書いたとされる。マテオ

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「マタイ」の意味・読み・例文・類語

マタイ(Matthaios)

イエス=キリスト十二使徒の一人。ローマの収税吏だったが、イエスの弟子となった。「マタイによる福音書」の著者とされる。マタイオス。マテオ。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「マタイ」の意味・わかりやすい解説

マタイ
Matthew

1世紀半ばの,イエスの十二弟子の一人として数えられている人物(《マルコによる福音書》3:18,《マタイによる福音書》10:3,《ルカによる福音書》6:15など)。ただし《マタイによる福音書》は彼を〈取税人〉と呼び,さらに《マルコによる福音書》2章14節のレビなる人物と同一視している(9:9)。マタイ,レビともにヘブライ名なので,二つの名を同時にもっていたとは考えられず,その関係は不明である。2世紀前半のパピアスは,このマタイが《マタイによる福音書》を書いたとしており(カエサレアのエウセビオス《教会史》),エイレナイオステルトゥリアヌスオリゲネスもそれを支持しているが,この伝承信憑性は疑われている。
執筆者:

福音書記者として描かれるときの象徴は天使(有翼の人間)。本と筆をもち,天使の言葉を筆記する姿でも表される。拷問具の槍や,以前の職業(取税人)に関連する財布,天秤なども持物。取税人の職を捨ててキリストに従ったことを示して,財布を踏みつけていることもある。説話場面としては,取税所で仕事中,通りかかったキリストによび出される場面(いわゆる〈マタイのお召し〉。《マタイによる福音書》9:9など)が近代絵画に多い。キリストを交えてのレビ家の饗宴(《ルカによる福音書》5:29など),エチオピアでの奇跡殉教などの場面も表される。祝日9月21日
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「マタイ」の意味・わかりやすい解説

マタイ
またい
Matthaios

イエスの直弟子で、いわゆる十二使徒の1人に数えられている。「マタイ伝福音書(ふくいんしょ)」によれば、このマタイは取税人で、収税所に座っているときにイエスから呼びかけられ、ただちに彼の弟子になった。ところが、「マルコ伝福音書」と「ルカ伝福音書」は、(アルパヨの子)レビについて、同じような召命の場面を描いている。ここから、マタイとレビが同一人物であるかどうかが長い間議論されてきたが、結局、両者を同一視するための決定的根拠はみいだされていない。また、古代教会史家エウセビオスは、使徒マタイがヘブライ語で福音書を書いたという古い伝承を記しているが、近年では、使徒マタイと福音書記者マタイを区別する説のほうが有力である。しかし、両者がまったく無関係であったともいえず、なお問題が残されている。そのほか、マタイの伝道や殉教をめぐっても、種々の伝承があるが、その根底に潜む史実は依然として不明である。

[土屋 博]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「マタイ」の意味・わかりやすい解説

マタイ
Matthaios; Matthew

キリストの十二使徒の一人。共同訳聖書ではマタイオス,カトリックではマテオ,ギリシア正教会ではマトフェイといわれる。カペナウムの収税吏であったが,キリストに呼ばれてその弟子となる (マタイ福音書9・9) 。古代以来使徒マタイが第1福音書の著者とされたのは,この記事に由来していると思われ,マタイがイエスのロギア (語録。ここではマタイ福音書をさす) を書いたというパピアス (150頃) の証言は信憑性に乏しい。福音書中にも上記以外は使徒リストに名を連ねているだけで,その生涯については伝説以上のことは知られていない。アレクサンドリアのクレメンスによれば,キリスト昇天後 12年でパレスチナを離れ,宣教師になったとされるが,宣教地もエチオピア,パルチア,ペルシアと伝承により異なる。クレメンスは,彼の死を殉教でなかったというが,東西両教会とも殉教聖人として尊崇している。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

百科事典マイペディア 「マタイ」の意味・わかりやすい解説

マタイ

イエスの十二弟子の一人とされる人物。1世紀中葉に活動。生没年不明。もと取税人であったという。《マタイによる福音書》の作者とするのは疑わしいとする説が有力。
→関連項目マタイ受難曲

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

世界大百科事典(旧版)内のマタイの言及

【原始キリスト教】より

… まずマルコは,受難・復活に至るイエスの生涯を上記(2)の伝承の編集によって復元し,(1)の伝承の宣教内容(福音)に史的状況をとり戻して,ガリラヤの民衆の位置に立ったイエスとの生を示唆することを目的として福音書を創出した。マタイの場合は,《マルコによる福音書》と(2)の伝承,とりわけQ資料(マタイとルカが,《マルコによる福音書》以外に共通の資料としたと考えられている,主としてイエスの言葉から成る仮説的な資料のこと。Qとはドイツ語Quelle(資料)の頭文字をとったもの)および特殊資料(各個福音書にのみ見いだされる特殊な資料)に拠り,彼独自の福音書を編集して,イエスの教えを旧約の律法の完成とみなす立場を打ち出した。…

【山上の垂訓】より

…〈山上の説教〉ともいう。《マタイによる福音書》5~7章の通称で,この部分は5章1節と8章1節の状況説明によって,〈山上で〉語られたイエスの説教とされているためこう呼ばれる。この場合,〈山〉は当時のユダヤ教においては,旧約聖書が伝えるシナイ山での律法授与のできごと(《出エジプト記》19章以下)以来,神からの啓示と律法が与えられる聖なる場所と考えられていた。…

【マタイによる福音書】より

…その背後にはキリスト教律法学者(13:52参照)のグループが存在し,著者もその一員であると考えられる。十二弟子の一人のマタイを著者とする古代教会以来の伝統には信憑性がない。【大貫 隆】。…

※「マタイ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

黄砂

中国のゴビ砂漠などの砂がジェット気流に乗って日本へ飛来したとみられる黄色の砂。西日本に多く,九州西岸では年間 10日ぐらい,東岸では2日ぐらい降る。大陸砂漠の砂嵐の盛んな春に多いが,まれに冬にも起る。...

黄砂の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android