モッコク(読み)もっこく

改訂新版 世界大百科事典 「モッコク」の意味・わかりやすい解説

モッコク (木斛)
Ternstroemia gymnanthera (Wight et Arn.) Sprague

ツバキ科の常緑高木で,おもに暖地の海岸近くに野生する。12月に果実の皮が破れて,中からエンドウ豆大の赤い種子がでる。樹高15m,直径80cmにもなり,枝はやや放射状に分かれる。若枝は灰褐色で無毛。小さい楕円形の皮目が多い。葉は枝の先に放射状に集まり,質厚く,表面深緑色で光沢がある。花は直径2cmぐらいの黄白色,6月に下向きに咲く。花弁は5枚,基部で合生する。材は赤色年輪がはっきりしない。千葉県以西,四国,九州,琉球にかけて,また南朝鮮,中国からマレーシア地域やインドまで分布する。樹形を手入れしなくとも維持でき,葉に光沢があって美しいことから,日本の暖地ではごく普通の庭木として植えられている。材は硬くて重いが,建築,器具寄木細工,櫛などに用い,薪炭にもする。八丈島三宅島ではタンニンを含む樹皮から茶褐色染料をとる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「モッコク」の意味・わかりやすい解説

モッコク
もっこく / 木斛
[学] Ternstroemia gymnanthera (Wight et Arn.) Sprague

ツバキ科(APG分類:サカキ科)の常緑高木。葉は互生し、倒卵形で長さ約5センチメートル。葉柄は赤みを帯びる。夏、新枝の下半分に径約1センチメートルの白色花を開く。両性花と雄花があり、両性花は雄しべ一重の輪となって雌しべを囲むが、雄花では雄しべが三重の輪に並び、数も多い。萼片(がくへん)、花弁はともに5枚、花柄上部に小包葉が2枚ある。果実は球形で肉質、秋に熟し、中に赤い種子がある。海岸近くの林中に生え、関東地方南部以西の本州から沖縄、および東アジアの暖帯、熱帯に広く分布する。庭木としてよく植えられる。材は赤みを帯びて緻密(ちみつ)で堅く、建築、器具材、寄木細工、櫛(くし)などに用いられる。樹皮はタンニンを含み、茶褐色の染料とされる。

[杉山明子 2021年3月22日]


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百科事典マイペディア 「モッコク」の意味・わかりやすい解説

モッコク

ツバキ科の常緑高木。本州(関東地方以西)〜沖縄,東〜東南アジアの暖地に広くはえる。葉は枝先に集まり,長楕円状倒卵形で,厚い革質,光沢がある。夏,葉腋から長さ1〜2cmの花柄を出し,径約2cmの白色の5弁花を平開する。おしべ多数。果実は球形で10〜11月,紫赤色に熟して裂け,赤色の種子を出す。材は堅く,床柱,器具など,樹は庭木とされる。

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