マンション建替え円滑化法(読み)まんしょんたてかええんかつかほう

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

マンション建替え円滑化法
まんしょんたてかええんかつかほう

戸建住宅に比べ土地や建物の権利関係が複雑なマンションの建替えや改修などを促進するため、その手続きや方法などを定めた法律。2002年(平成14)6月に成立、同年12月に施行された。正式名称は「マンションの建替え等の円滑化に関する法律」(平成14年法律第78号)。同法施行以前は、マンション住人らの区分所有者が建替え決議をしても、建替えを進める団体の法的位置づけや運営ルールが明確ではなく、区分所有者の権利移転などが困難であった。そこで法人格をもつ「建替組合」を設立して工事の契約や資金の借入れなどを可能とし、「権利変換手法を導入して区分所有権の権利を建替え後のマンションへ移行させることで、区分所有権に担保を設定している金融機関の合意を得やすくした。

 2014年6月には、首都直下型地震南海トラフ地震に備え、耐震性が不足したマンションの建物解体や跡地売却を促す改正マンション建替え円滑化法が成立、同年12月に施行された。それまで耐震性が不足したマンションの建物解体や敷地売却には民法原則、区分所有者全員の同意が必要であったが、改正法施行後、区分所有者の5分の4以上の賛成で解体・売却を可能とした。同時に建替えの際、部屋数を増やせるように容積率の緩和特例を認めた。これにより、増やした部屋を第三者に売却して得た代金を建築費に充当することが可能となるなど、区分所有者の負担を軽減することで、新しいマンションへの住替えをしやすくした。国土交通省によると、2014年時点で全国に約590万戸あるマンションのうち、1981年(昭和56)以前の旧耐震基準で建てられたマンションは約106万戸ある。

 なおマンションの建替え要件を定めた法律には、マンション建替え円滑化法のほか、民法、区分所有法耐震改修促進法都市再生特別措置法などがあり、一般のマンションか、耐震性が不足したマンションか、あるいは改修か、建替えか、新しいマンションへの住替えか、などの条件によって、規定する法律が異なっている。

[矢野 武 2017年5月19日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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