ベリマン(John Berryman)(読み)べりまん(英語表記)John Berryman

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

ベリマン(John Berryman)
べりまん
John Berryman
(1914―1972)

アメリカの詩人オクラホマ州の出身。同州の農場で幼年期を過ごしたが、そのころ目撃した父の自殺が終生心に付きまとい、ついには彼自身を自殺に追いやる一因ともなった。コロンビア大学で頭角を現し、ケンブリッジ大学でシェークスピアとイギリス・ルネサンス文学を学び、これが彼の韻文に生彩を添えた。最初の主要作品は、1956年の『ブラッドストリート夫人讃歌(さんか)』で、57連からなるこの野心作は、ピューリタン時代の最初のアメリカ詩人、アン・ブラッドストリートの生活と受難に捧(ささ)げる讃歌である。話者の声とアン・ブラッドストリートの声をクロスさせる技巧によって、力強く直截(ちょくせつ)さにあふれた詩的イメージを生み出している。ピュリッツァー賞を受けた『77編の夢の歌』を含む大作『夢の歌』(1969)では、主人公は複数の仮面(ペルソナ)として登場し、破格な統語法、複数の声、スラングなどを用いて、現代世界に生きる詩人の主として苦渋を表白する。父の死、離婚、詩人としてのプライド、アルコール中毒などがモチーフとなっている。この作品に沈んでいる告白は晩年詩集であからさまに歌われる。

[徳永暢三]

『沢崎順之助訳『ブラッドストリート夫人讃歌』(『世界文学全集53』所収・1968・集英社)』

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