フィンランド語(読み)フィンランドゴ(英語表記)Finnish

翻訳|Finnish

デジタル大辞泉 「フィンランド語」の意味・読み・例文・類語

フィンランド‐ご【フィンランド語】

ウラル語族フィン‐ウゴル語派に属する言語。フィンランド国語

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精選版 日本国語大辞典 「フィンランド語」の意味・読み・例文・類語

フィンランド‐ご【フィンランド語】

〘名〙 狭義ではフィン語に同じ。広義ではフィンランドの公用語(フィンランド語およびスウェーデン語)をさす。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「フィンランド語」の意味・わかりやすい解説

フィンランド語
ふぃんらんどご
Finnish

ウラル語族の主流フィン・ウゴル語派に属するバルト・フィン系の言語で、フィンランド共和国の人口518万(2000)のうち約92%にあたる475万人が使用し、スオミ語Suomiと自称する。ロシア連邦のカレリア共和国(人口約74万)の標準語でもある。方言は東と西に大別される。ウラル語族中もっとも西に進出したスオミ人は、バルト・スラブ語やゲルマン語と接触して文化用語を吸収しながら、紀元前500年ごろバルト海沿岸に到着した。やがてフィンランドの南西部に上陸し、サーミ人を追いながら東と北へ広がり、800年ごろまでに現在の地に定着した。トゥルクの司教ミカエル・アグリコラ(1508ころ―57)の『ABC入門』(1537~43)と『新約聖書』訳(1548)がフィンランド最古の文献である。19世紀に文化語としての体裁が整い、その後フィンランド文学が開花した。

 音声的には、八つの母音が母音調和に支配され、子音階程交替を行う。talo-ssa「家の中に」、kylä-ssä「村の中に」のように、後舌母音a, o, uの後ろでは内格語尾の-ssaが、前舌母音のi, e, y, öの後ろでは-ssäをとる。また、kukka「花が」~kukan「花の」、katu「通りが」~kadun「通りの」のように、短母音で終わる音節にたつ強階程子音-kk-と-t-が子音で終わる音節に変わると、弱階程の-k-や-d-に交替する。形態的特徴としては、名詞が15格に変化し、これに所有語尾が付加される。talo-sta-ni「家・の中から・私の」、talo-lta-si「家・のほうから・君の」。動詞は人称と単数・複数で時制により変化し、否定動詞をもつ。kirjoita‐n「私が書く」~e‐n kirjoita「私は書かない」と、否定動詞enが人称変化をなす。受動形は行為者が不明のときにのみ用いられる。tämä kirja hyvin luetetaan.「この・本は・よく・読まれている」。不定詞を格変化させて使用する。nukku-e-ssa-ni「眠る・第二不定詞・内格形・私の→私が眠っている間に」。後置詞と前置詞の両方がある。talon takana「家の・後ろに」、ennen sotaa「前に・戦争を」。tyttö lukee kirjaa-nsa.「少女が・読んでいる・本を・彼女の」。

小泉 保]

『小泉保著『フィンランド語文法読本』(1983・大学書林)』

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改訂新版 世界大百科事典 「フィンランド語」の意味・わかりやすい解説

フィンランド語 (フィンランドご)
Finnish

ウラル語族フィン・ウゴル語派中のバルト・フィン諸語に属する言語でフィンランド共和国で話されている。人口470万中94%がフィンランド語を用い,他はスウェーデン語を使っている。スオミ語Suomiと自称する。方言は東方言と西方言に大別される。

 フィンランド語の特徴は,音韻面では母音と子音に長短の区別があること(例:tuli〈火〉,tuuli〈風〉,tulli〈税関〉),母音調和をもつこと(例:talo-ssa〈家の中に〉,kylä-ssä〈村の中に〉),音節が母音で終わる(開音節)か子音で終わる(閉音節)かにより音節頭位の閉鎖子音が交替する階程交替を行うこと(例:kukka〈花が〉,kukan〈花の〉)がある。形態的には名詞が単数と複数で15格に変化すること,所有語尾が付加されること(例:talo-sta-ni〈家・の中から・私の〉),動詞は人称と数で活用し,否定動詞をもつこと(例:puhu-i-n〈私が話した〉(-i-が過去,-nが単数一人称語尾),en puhu〈私は話さない〉(enは否定動詞)),四つの不定詞形をもつことなどがある(例:第1不定詞puhu-a〈話すこと〉,第2不定詞puhu-e-ssa〈話しているとき〉,第3不定詞puhu-ma-lla〈話すことで〉,第4不定詞puhu-minen〈話すこと〉)。語順は自由で,たとえばpoika lukee kirjaa.〈少年が・読んでいる・本を〉では各語を入れ替えることができる。最古の文献はM.アグリコラの《ABC読本》(1543)と〈新約聖書〉訳(1548)で,19世紀にE.リョンロートにより口承の民族詩《カレワラ》(1848)が発表されて以来文化的語彙が整備され,文学が開花した。
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百科事典マイペディア 「フィンランド語」の意味・わかりやすい解説

フィンランド語【フィンランドご】

フィン語とも。フィンランド共和国の国語であり,約500万人が話す言語。自称スオミ語。フィン・ウゴル語派のフィン語派に属する。16世紀から宗教書などの文献があり,民間伝承の《カレワラ》なども有名。母音調和や,子音階程交替を伴う規則的な膠着(こうちゃく)語的文法構造が特色。
→関連項目ウドムルト語エストニア語サーミ語フィンフィン語ボート語リーブ語

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「フィンランド語」の意味・わかりやすい解説

フィンランド語
フィンランドご
Finnish language

フィンランドの国語で,約 500万人の話し手がいる。フィン語ともいう。自称スオミ語。ウラル語族に属し,バルト=フィン諸語の一つであるこの言語の特徴は,形態音韻論上,母音調和のみられること,子音の階程交替がp,t,kについて起ることである。子音交替は,量的交替と質的交替とがある。いずれも第2音節以下の問題の音節が開音節であれば強階程,閉音節ならば弱階程が出てくる。 seppä「鍛冶屋」~sepän「鍛冶屋の」,hattu「帽子」~hatun「帽子の」,ukko「老爺」~ukon「老爺の」にみられる pp~p,tt~t,kk~kが量的交替,tupa「小屋」~tuvan「小屋の」,sata「百」~sadan「百の」,kyky「力」~kyvyn「力の」にみられるp~v,t~d,k~vなどが質的交替の例 (いずれも強階程~弱階程の順) 。格は 16を認めるのが通例。文献は 16世紀から。

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世界大百科事典(旧版)内のフィンランド語の言及

【ウラル語族】より

…ウラル語族はまずフィン・ウゴル語派サモエード諸語に大別される。さらにフィン・ウゴル語派は,バルト・フィン諸語Balto‐Finnic(フィンランド語,カレリア語,エストニア語,ボート語ほか)やモルドビン語,チェレミス語(マリ語),ボチャーク語(ウドムルト語),ジリャン語(コミ語)などを含むフィン語派Finnicと,ハンガリー語,ボグル語(マンシ語),オスチャーク語(ハンティ語)などを含むウゴル語派Ugrianに区分される(図)。これら言語の間には基本的語彙に厳密な音韻の対応が見られる。…

【国語】より

…フィンランドには公認の言語が二つあった。フィンランド語は農村住民が主として使い,スウェーデン語は昔の官庁語で,都市ブルジョアジーに使われた。しかし,フィンランド語を話す中産階級が進出し,その教養層が多数都市に集まり,現在ではフィンランド語が多数派となり唯一の国家語としての地位を固めつつある。…

【フィンランド】より

…正式名称=フィンランド共和国Suomen Tasavalta∥Republic of Finland面積=33万8145km2人口(1996)=513万人首都=ヘルシンキHelsinki(日本との時差=-7時間)主要言語=フィンランド語,スウェーデン語通貨=マルッカMarkkaヨーロッパの北部を占める共和国。フィンランドは英語名で,自称名はスオミSuomi。…

【母音調和】より

…母音調和には,(1)同一母音を用いる完全調和と,(2)同一特徴の母音を用いる部分調和とがある。 (1)完全調和の例として,フィンランド語の入格語尾〈…の中へ〉がある。talo‐on〈家の中へ〉,muna‐an〈卵の中へ〉,tyttö‐ön〈少女の中へ〉のように,語幹末の母音を繰り返してから‐nをつける。…

※「フィンランド語」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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