パルスオキシメーター(読み)ぱるすおきしめーたー(英語表記)pulse oximeter

デジタル大辞泉 「パルスオキシメーター」の意味・読み・例文・類語

パルス‐オキシメーター(pulse oximeter)

指先などにクリップ状の器具を装着し、動脈血酸素飽和度血液中の酸素濃度)を計測する医療機器。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「パルスオキシメーター」の意味・わかりやすい解説

パルスオキシメーター
ぱるすおきしめーたー
pulse oximeter

血液中にどのくらい酸素が溶け込んでいるかを示す「(動脈血)酸素飽和度」と「脈泊数」を測定する装置心拍にあわせて脈動する動脈血(心臓から送り出される血液)中のヘモグロビンがどのくらい酸素を運んでいるか、「飽和度(サチュレーションsaturation)」を脈(パルスpulse)と同時に測定する。測定値は、飽和度、パルス、酸素(O2)の頭文字をとってSpO2(エスピーオーツー)とよばれる。

 パルスオキシメーターは、洗濯挟みのようなセンサーを指先などの測定部位に挟んで固定する小型装置で、表示部(機器本体)と測定部(プローブ)が分かれてケーブルでつなぐ分離タイプと、両者が一体となったタイプがある。プローブにはLEDとセンサーが内蔵されており、LEDが発する波長の異なる2種類の光(赤外光と赤色光)が測定部位の血管に当たると、酸素と結びついた酸化型のヘモグロビンは赤外光を吸収し、酸素と結合していない還元型ヘモグロビンは赤色光を吸収するので、この差を計算してSpO2の値をはじき出す。静脈血からのノイズを除去し動脈特有の信号を検知するため、拍動を利用する。

 正常とされる酸素飽和度の基準値はおよそ96~99%で、90%以下であれば肺機能の低下が考えられる。従来は血液を採取して、飽和度を測定していたが、装着直後から、測定値が短時間で連続的に得られるため、低酸素状態に陥る危険性の高い麻酔手術時などに呼吸管理のモニターとして幅広く利用され、麻酔中の酸欠事故を激減させた。睡眠時無呼吸症候群判定にも用いられているほか、2020年以降、地球規模で広がった新型コロナウイルス感染症(COVID(コビッド)-19)の病態管理、治療法の選択と効果などを瞬時に確認できるため、世界中で活用された。

 原理を最初に発明したのは、日本光電工業の研究室長などを務めた、医療工学者の青柳卓雄である。学会発表は1974年(昭和49)のことで、2015年に医療分野における革新的な技術開発に貢献したとして、日本人で初めてアメリカ電気電子学会(IEEE)学会賞を受賞した。

[玉村 治 2023年7月19日]

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知恵蔵mini 「パルスオキシメーター」の解説

パルスオキシメーター

人体の動脈血中の酸素飽和度と脈拍数を測定するための装置。光センサーが付いたクリップで指先を挟むことで、採血をせずに簡単に測定できる。医療機器メーカーの開発者であった青柳卓雄によって1972年に開発された。呼吸で取り込んだ酸素は血液に含まれるヘモグロビンと結合して全身に運ばれるが、パルスオキシメーターを用いてヘモグロビンが酸素とどの程度結合できているかを読み取ることで、より正確に呼吸の状態を観察することができる。一般的に96〜99パーセント結合しているのが標準値とされ、90パーセント以下では十分な酸素を全身の臓器に送れていない「呼吸不全」の状態になっている可能性があるとされる。

(2020-5-1)

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