パスカル

精選版 日本国語大辞典 「パスカル」の意味・読み・例文・類語

パスカル

[1] (Blaise Pascal ブレーズ━) フランスの思想家、数学者、物理学者。数学的確実性を信じ、懐疑論に反対。のち宗教的回心を経てヤンセン主義に共鳴し、イエズス会による異端審問を批判した。思想的には現代実存主義の先駆とみなされる。数学では、円錐曲線論・確率論を発表、物理学では、流体(液体・気体)の圧力に関する法則「パスカルの原理」を発見した。主著パンセ」の「人間は考える葦である」ということばは有名。(一六二三‐六二
[2] 〘名〙
① (pascal) 圧力の単位記号 Pa 主として真空技術で用いられる。一パスカルは一平方メートル当たり一ニュートンの力が作用するときの圧力。気圧についてはヘクトパスカルが用いられる。(一)の名にちなむ。
② (PASCAL) スイス連邦工科大学のニクラウス=ヴィルトが設計した高級プログラミング言語オペレーティングシステムの記述言語などとして使われている。(一)の名にちなむ。

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百科事典マイペディア 「パスカル」の意味・わかりやすい解説

パスカル

フランスの数学者,物理学者,宗教思想家。16歳で《円錐曲線論》を著し,パスカルの原理を明らかにした。また,簡単な計算機の作製,トリチェリの真空についての実験などを行った。思想的には,演繹(えんえき)に基づく抽象的な〈幾何学の精神〉に対して,直観的な〈繊細の精神〉を主張。1654年11月23日,決定的回心をして,ポール・ロアイヤル修道院の客員となり,ジャンセニスムの代表的神学者として,理性に対する心情の論理から信仰を弁護。人間は無と無限,無価値と高貴,卑小と偉大のような矛盾的側面をもつが,そのような二面性を知らせるのがキリスト教であるとした。その透徹した人間分析と宗教思想は,現代実存主義をはじめ,フランスの文芸・思想に大きな影響を与えた。著書《パンセ》(遺稿),《プロバンシャル》など。→パスカル(単位)
→関連項目串田孫一射影幾何学ポール・ロアイヤル運動モラリスト流体力学

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「パスカル」の意味・わかりやすい解説

パスカル
Pascal, Blaise

[生]1623.6.19. クレルモンフェラン
[没]1662.8.19. パリ
フランスの哲学者,科学者,数学者。 23歳頃からヤンセニウスの教えを奉じるポール=ロワイヤル修道院の厳格なキリスト教に心をひかれ,1654年秋の深い宗教的体験以後は熱烈な信仰生活に入った。 56年から1年余の間,ポール=ロワイヤルとイエズス会との論争の渦中に身を投じ,一連の『プロバンシアル (いなかに住む人へ) 』を偽名発表。その後はキリスト教弁証論の執筆に励んだが,未完のまま病没した。遺稿『パンセ』 Pensées (1670) が主著。科学者,数学者としては「パスカルの原理」や「パスカルの定理」が有名。

パスカル
pascal

圧力,応力の国際単位系 SI組立単位。記号は Pa。1Pa=1N/m2=1kg/m・s2である。気象学では気圧の単位としてヘクトパスカル hPaが使用されている。単位名はブレーズ・パスカルの名にちなむ。

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デジタル大辞泉 「パスカル」の意味・読み・例文・類語

パスカル(Blaise Pascal)

[1623~1662]フランスの数学者・物理学者・思想家。円錐曲線における定理の発見、計算器の考案、トリチェリの真空実験の追試の成功に基づくパスカルの原理の発見や、確率論の創始など、多くの科学的業績を残した。ジャンセニスムの信仰に入り、イエズス会を「田舎の友への手紙(プロバンシアル)」で攻撃。キリスト教弁証論を書くための覚え書きが死後「パンセ」としてまとめられた。

パスカル(pascal)

国際単位系(SI)の圧力の単位。1パスカルは1平方メートル当たり1ニュートンの力が作用するときの圧力。気圧についてはヘクトパスカルが用いられる。B=パスカルの名にちなむ。記号Pa

パスカル(PASCAL)

コンピューターのプログラミング言語の一。ALGOLアルゴル系で、構造化プログラミングに即した制御構造をもつ。スイスのビルトが教育用に開発し、パスカルにちなみ命名。

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旺文社世界史事典 三訂版 「パスカル」の解説

パスカル
Blaise Pascal

1623〜62
フランスの数学者・物理学者・哲学者・宗教思想家
円錐曲線論・流体力学の研究から,流体の圧力伝播に関するパスカルの原理を発見し,確率論・積分法などにも業績を残した。この間,回心してヤンセニズムに共鳴し,ポール−ロワイヤル運動に参加。『田舎への手紙』でイエズス会の神学と道徳を批判した。遺稿ノート『瞑想録(パンセ)』は有名。

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単位名がわかる辞典 「パスカル」の解説

パスカル【pascal】

圧力・応力の国際単位。記号は「Pa」。単位面積あたりの力の大きさを示す量。1Paは、1m2あたり1ニュートンの力が加わる圧力。気象学ではヘクトパスカル(1hPa=100Pa)を使用する。標準大気圧は10万1300Paで、1013hPaと等しい。◇名称は、フランスの物理学者・数学者パスカルにちなむ。

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知恵蔵 「パスカル」の解説

パスカル

圧力や応力のSI単位。固有の名称を持つ組立単位の1つで、フランスの学者名にちなむ。圧力や応力は、単位面積当たりの力の大きさを示す量で、その単位パスカルは、1平方メートル当たり1 Nの力が加わる圧力(応力)を意味する。標準大気圧は約10万 Pa(100 kPa)である。

(今井秀孝 独立行政法人産業技術総合研究所研究顧問 / 2008年)

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化学辞典 第2版 「パスカル」の解説

パスカル
パスカル
pascal

圧力の単位.記号 Pa.国際単位系(SI単位)の基本単位.

1 Pa = 1 N m-2
1969年ころからこの単位名および記号が,国際的に承認された.

1 Pa = 9.86923×10-6 atm = 7.50062×10-3 Torr.

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世界大百科事典 第2版 「パスカル」の意味・わかりやすい解説

パスカル【Blaise Pascal】

1623‐62
フランスの科学者,宗教思想家,文学者。中部フランスのクレルモン(現在のクレルモン・フェラン)に生まれる。父のエティエンヌ・パスカルÉtienne Pascal(1588‐1651)は税務関係の地方行政官であったが,数学その他の科学にも造詣が深く,当時の教養ある法服貴族の一典型といえる。早く妻を亡くしたエティエンヌは,1631年官を辞して一家でパリに赴き,メルセンヌの主宰する科学アカデミーに出入りするかたわら,子どもの教育に専念する。

パスカル【pascal】

圧力,または応力の単位で,記号はPa。1Pa=1N/m2と定義される。すなわち,面積1m2に対し,1Nの力が均等に作用するときの圧力,または応力をいう。体重50kgの人を地球の重力に抗して支える力は,地球の重力の加速度を9.8m/s2とすると,50kg×9.8m/s2=490Nである。もしこの人が,かかとの面積1cm2のハイヒールをはいていて,それに全体重をかけたとしたら,そのヒールのかかとにかかる圧力は490N/0.0001m2=4900000Paと非常に大きい値になる。

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ASCII.jpデジタル用語辞典 「パスカル」の解説

パスカル

Pascal」のページをご覧ください。

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世界大百科事典内のパスカルの言及

【エッセー】より

…彼の《随想録》(1580,88)は,深く広い思索を,くだけた気ままな文体で,気の向くままに書きとめたかたちをとっており,新しい魅力ある散文芸術様式として後世に大きい影響を及ぼしたからである。パスカルの《パンセ》(1670)は,モンテーニュとはまったく異質の思想を語りながら,《随想録》の影響ぬきには考えられない。モンテーニュは早い段階で英訳され,イギリスにおけるエッセー文学の隆盛の一つのきっかけとなった。…

【オーベルニュ】より

…高等法院はなかったが,クレルモン・フェラン(1731年クレルモンとフェランが合併)には租税法院が置かれており,これが王国の機関としては最も重要なものであった。哲学者パスカルの父親エティエンヌ・パスカルはその評定官であり,パスカル自身もクレルモンで生まれている。彼が空気の重さを証明する実験を行ったのは,ピュイ・ド・ドームの山頂においてであった。…

【懐疑論】より

…後期にはアイネシデモスやセクストス・ホ・エンペイリコス等が属するが,前者は感覚的認識の相対性と無力さを示す10の根拠を提示したことで知られ,後者は経験を重んずる医者として諸学の根拠の薄弱さを攻撃し,またその著書はギリシア懐疑論研究の主要な資料となっている。近世においては,ルネサンスの豊かな思想的混乱の中で懐疑思想も復活し,伝統的な思想や信仰を批判する立場からも,逆にそれを擁護する立場からもさまざまなニュアンスの懐疑論が主張されたが,その中でもモンテーニュのそれはたんに否定的なものにとどまらず生を享受する術となっている点で,またパスカルのそれはキリスト教擁護の武器として展開されているにもかかわらず作者の意図を越えて人間精神の否定性の深淵を垣間見させてくれる点でそれぞれ注目に値する。なおD.ヒュームはしばしば懐疑論者のうちに数えられ,彼に刺激を受けたカントについても懐疑論との関係で論じられることもある。…

【計算機械】より

…この機械は現在,復元されている。フランスの哲学者,数学者B.パスカルは,父親の煩雑な税務計算を助けるために,42年に歯車式の加減算機を作り,その後10年間に数十台を試作・製作した。ドイツの哲学者,数学者G.W.ライプニッツも,1671‐94年にかけて加減乗除のできる計算機を試作している。…

【決疑法】より

…他方,決疑法の機能は良心による正しく賢明な判断を助けることであり,後者を不用にするのではない。決疑法は福音書までさかのぼり,キリスト教倫理の重要な部分をしめるが,17世紀の中ごろ,空疎で,いたずらに精密な議論にふけって道徳の弛緩を招く傾向が目だち,パスカルの批判に服した。現代では逆に決疑法は状況倫理の唱導者から〈律法主義〉〈厳格主義〉として批判される。…

【真空】より

…それを〈トリチェリの真空〉と呼ぶ。この直後,フランスではB.パスカルが(義兄ペリエに依頼して)有名なピュイ・ド・ドームの実験を行って(1648),真空と大気圧の研究成果を確認している。17世紀中葉流行となったこのような真空実験で,もっとも著名なのはドイツのO.vonゲーリケによるそれだろう。…

【乗合馬車】より

…また,この言葉からバスの語が派生した。 哲学者のパスカルが17世紀後半に入って最初に考案したといわれ,その計画は1662年にパリ市内で実現され,営業が認可された。この乗合馬車は19世紀に発展したものと同じ性格をすでにもっており,パリの街区から街区へと決められた路線を定時運行し,五つの路線をもち,運賃は5ソルと高価なものだった。…

【パスカルの原理】より

…密閉された容器を満たす静止した流体においては,その中の一部の圧力を増加してやると,いたるところで圧力が同じだけ増加するという法則。B.パスカルが提出したものである。流体が運動しているときは成り立たない。…

【バロック】より

…また,地球を含めた惑星の公転の軌道が,完全な円ではなく,太陽をひとつの中心とする楕円である(ケプラー)とされたことも,それまでの完全性の観念を突破したものであった。
[パスカル]
 さて,バロック思想が,反宗教改革と動的宇宙像という二つに対応する側面をもったものであるとき,それら二つの側面を兼ね備えたものとして浮かび上がってくるのは,広い意味でジャンセニストだったパスカルである。《パンセ》のなかにみられる〈この無限の宇宙の永遠の沈黙が私をおののかせる〉ということばや,〈二つの無限〉の中間者としての人間の自覚は,そのことをよくあらわしている。…

【パンセ】より

…フランスの思想家パスカルの遺著。《瞑想録》との訳語もある。…

【プロバンシャル】より

パスカルの書簡集。A.アルノーの依頼を受けて1656‐57年にかけて匿名で執筆公表し,57年ルイ・ド・モンタルトの筆名で1冊にまとめられた18通の論争書。…

【ポール・ロアイヤル運動】より

…サン・シランを師と仰ぎ,その弟子A.アルノーを理論的指導者とするポール・ロアイヤルはカトリック宗教改革運動の一翼を担うが,他方ジャンセニスムの本拠地とみなされ,教権,俗権の双方から数々の弾圧を受け,1709年修道院は閉鎖され,運動は終りをつげた。しかしその間,ポール・ロアイヤルはその運動の担い手と関係者の中から,アルノー,パスカル,P.ニコル,ラシーヌといった著名な思想家,文学者を輩出し,フランス古典期の文化に大きく貢献した。また付属学校は教育史上名高く,そこでの教育経験から生まれたいわゆるポール・ロアイヤルの《論理学》と《文法》は近年注目を集めている。…

【メーヌ・ド・ビラン】より

…ついでこの考えを発展させ,人は動的,自発的努力によって受動的な感受性に打ち勝つべきであると力説した(《思考の分解》1805,《心理学基礎論》1812)。最後に彼は,パスカルの三つの秩序に対抗する三つの生(動物的生,人間的生,霊的生)の区別を説き,神への没入(実践的には犠牲と愛の生活)の重要性を教えた(《日記》1815‐24,《人間学新論》1823‐24)。【中川 久定】。…

【圧力】より

…国際単位系では1m2に1Nの力が一様にかかっているときの圧力の強さが単位になる。これをパスカルと呼びPaで表す。圧力の単位としてはこのほか,バール(bar。…

【パスカルの三角形】より

…図1のような三角形状の数の配列をパスカルの三角形という。パスカルの三角形の構成方法を説明するために,次のような記号を導入しよう。…

※「パスカル」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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