デュポンドヌムール会社(英語表記)E.I.du Pont de Nemours and Co.

改訂新版 世界大百科事典 「デュポンドヌムール会社」の意味・わかりやすい解説

デュポン・ド・ヌムール[会社]
E.I.du Pont de Nemours and Co.

アメリカ最大級の総合化学・繊維メーカー。略称デュポン社。本社デラウェア州ウィルミントン。1915年,デュポンEleuthère Irénée du Pont de Nemours(1771-1834)が1802年に設立した火薬製造会社E.I.du Pont de Nemours Powder Co.の事業を受け継ぎ,ウィルミントンに設立された。火薬事業への依存度の低下,利益の再投資という長期目標のもとで,火薬製造のノウ・ハウを生かしニトロセルロースなどの研究開発に力を注ぐとともに,17年のHarrison Brothers and Co.,28年のGrasselli Chemical Co.,30年のRoessler and Hasslacher Chemical Co.,33年のレミントン兵器会社などの買収を通じて,染料合成樹脂塗料などと事業を多角化していった。これらの結果,39年に世界初の合成繊維ナイロンの工業化に成功,次いで51年にアクリル繊維オーロン〉,52年にはポリエステル繊維ダクロン〉を開発した。さらにプラスチック合成ゴムなどの新製品を開発して事業内容を拡大し,20世紀の中ごろには世界最大の化学会社となった。1950年代以降,海外市場重視の経営戦略に転換,60年代に入りヨーロッパカナダを中心に多国籍企業化している。1994年度の売上高の47%が海外事業によるものである。日本への進出は1929年,中国の子会社E.I.du Pont China Inc.の支店を神戸に開設,染料,セロハン,速乾性ラッカーの販売を手がけたことに始まる。しかし本格的な進出は51年に東洋レーヨン(現,東レ)にナイロンの製造技術を供与してからである。2004年の売上構成は特殊ポリマーなど高性能素材22%,農業・栄養剤21%,塗装・色彩技術20%,安全・保護用品15%,電子・通信11%,織物・インテリア11%となっている。売上高273億ドル(2004年12月)。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のデュポンドヌムール会社の言及

【ウィルミントン】より

…同州最大の都市で,商業,金融,工業の中心地。1802年,フランス人のÉ.I.デュポン・ド・ヌムールがブランディワイン川の岸辺に火薬製造工場を建設して以来,デュポン・ド・ヌムール会社とともに発達し,化学薬品工場,銅精錬所,造船所のほかに,自動車組立て,ゴム,皮革,石油製品などの工場もある。【菅野 峰明】。…

【経営・経営管理】より

… アメリカの大企業で多角化が企業成長の基本的戦略として,いつごろから意識的に認められたかは確かではない。ただ第1次大戦後デュポン・ド・ヌムール社が行った多角化の成功が,他企業に刺激を与えたことは確かである。すなわち第1次大戦まで企業合併でアメリカで最大の火薬企業となっていたデュポンは,第1次大戦の終結と戦争需要の消滅といった事態のなかで,染料,鉛・顔料,合成樹脂,合成皮革といった新規事業分野に,戦争中得た特別利潤と戦後生まれた遊休能力を活用する,事業多角化にのり出すことを決定した。…

【研究所】より

…研究所とは,知識の探究とその実際的利用の可能性を探ることを目的とする組織であるが,現在,多種多様な研究所が存在し活動している。すなわち,分野別(人文・社会科学,科学技術),設置主体別(国・公・私),設置形態別(独立・付属),内容別(基礎・応用)など,実にさまざまな研究所がある。本項では,科学技術関係の研究所に焦点を合わせ,その形成と展開を歴史的に概観する。
[ベーコンの夢]
 17世紀の哲学者F.ベーコンは,未完に終わったユートピア物語《ニュー・アトランティス》(1627)のなかで,巨大な国立研究所ともいうべきサロモン学院に言及している。…

【石油化学工業】より

…1920年代に幕があいた石油化学工業は,30年代に入って,ナイロンと低密度ポリエチレンという,合成繊維とプラスチックを代表する製品が開発されたことにより,本格的な発展への足掛りをつかんだ。ナイロンは,38年デュポン・ド・ヌムール社(以下デュポン社)のW.H.カロザーズが発明したものだが,その開発は,爆薬の生産により第1次大戦中に急成長を遂げたデュポン社が,新たな発展の場を求めて豊富な資金を有機合成化学の基礎研究に注いだことによって成功したといえる。 他方,低密度ポリエチレンはイギリスのICI社によって1931年偶然に発明されたが,その工業化は39年になってスタートした。…

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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」