合成樹脂(読み)ゴウセイジュシ(英語表記)synthetic resin

デジタル大辞泉 「合成樹脂」の意味・読み・例文・類語

ごうせい‐じゅし〔ガフセイ‐〕【合成樹脂】

合成高分子化合物のうち、繊維およびゴムを除いたものの総称。最初に作られたときに天然樹脂に似ていたので合成樹脂とよばれたが、樹脂ではない。プラスチックとよばれるものの大部分はこれで、熱に対する性質から、ポリ塩化ビニルポリエチレンなどの熱可塑性樹脂と、フェノール樹脂メラミン樹脂などの熱硬化性樹脂とに大別される。人造樹脂。
[類語]プラスチックシリコーンシリコーン樹脂ベークライトメラミン樹脂

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精選版 日本国語大辞典 「合成樹脂」の意味・読み・例文・類語

ごうせい‐じゅし ガフセイ‥【合成樹脂】

〘名〙 構造用材、部品材、日用品の機器材料などに用いられる合成高分子化合物の総称。繊維、ゴムなどとして利用される合成高分子化合物は、合成繊維、合成ゴムといって区別する。ポリ塩化ビニル、ポリエチレンなどの熱可塑性樹脂と、フェノール樹脂、尿素樹脂などの熱硬化性樹脂とがある。人造樹脂。〔百万人の科学(1939)〕

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改訂新版 世界大百科事典 「合成樹脂」の意味・わかりやすい解説

合成樹脂 (ごうせいじゅし)
synthetic resin

合成高分子物質のうちで,合成繊維と合成ゴムを除いた,成形品,フィルム,接着剤,塗料として利用されるものの総称。実質上はプラスチックplasticと同義と考えてよいが,プラスチックは成形品になるもののみをいう場合がある。

古くから,松やに(ロジン),昆虫の分泌物のシェラックなどが天然樹脂として知られ,また,半合成樹脂としてセルロイドニトロセルロース),アセチルセルロースなどが生産されていたが,合成樹脂工業の歴史は1907年にアメリカのL.H.ベークランドが発明したベークライトbakeliteに始まる。ベークライトはフェノールとホルマリンから純粋に人工的に合成された物質で,フェノール樹脂の一つである。その後ポリスチレン(1930),ポリ塩化ビニル(1933),ポリエチレン(1939),ナイロン(1939),ポリプロピレン(1954)と代表的な合成樹脂が発明され,それぞれ工業化されていった。合成樹脂工業の発展の歴史を年表1,2に示す。しかし合成樹脂が材料として広く用いられるようになったのは第2次大戦中およびそれ以降のことである。工業材料として飛躍的な発展をとげた理由として,戦後大きく発展した石油化学工業によって原料が支えられ,多量にかつ安価に合成樹脂が供給されるようになったこと,軽くてじょうぶであり,カラフルなものができるため産業用,家庭用として使い勝手がよかったこと,いろいろと複雑な形に成形でき,かつ成形コストも安いこと,などがあげられる。

 しかしながら,1973年の第1次,79年の第2次オイル・ショックを通して,石油との結びつきが問題になり,また大量に使いすてられるプラスチック廃棄物の処理も問題となってきている。今後の合成樹脂の伸びる方向として,少量でも機能を生かして用いられるエンジニアリングプラスチックとか,省エネルギーのために,鉄やアルミニウムより強くて軽い強化プラスチックの一種ACM(advanced composite materialの略称。炭素繊維などで補強された先進複合材料)などが注目されている。

合成樹脂の種類は多いが,通常は成形性の面から二つに分けられる。一つは熱硬化性樹脂thermosetting resinであり,他は熱可塑性樹脂thermoplastic resinである。熱硬化性樹脂としては,ホルムアルデヒドで硬化するフェノール樹脂,メラミン樹脂などと,重合などによって硬化する不飽和ポリエステル樹脂エポキシ樹脂,ポリウレタン樹脂,シリコーン樹脂などがある。熱可塑性樹脂には,比較的安価で,用途も多岐にわたって大量に使用されるポリエチレン,ポリプロピレン,ポリスチレン,ポリ塩化ビニル,ポリ酢酸ビニル樹脂,ABS樹脂などの汎用プラスチックと,それぞれの機能が活用されるナイロン(ポリアミド),ポリアセタールポリカーボネートポリエチレンテレフタレートポリブチレンテレフタレートなどのエンジニアリングプラスチック,さらに高機能で耐熱性にもすぐれた特殊エンジニアリングプラスチックといわれるポリフェニレンオキシド,ポリアリレート,ポリスルホン,ポリフェニレンスルフィド,ポリアミドイミド,ポリイミドなどがある。フッ素樹脂も特殊エンジニアリングプラスチックの一つと考えてよい。

熱硬化性樹脂は重縮合の途中またはモノマーを含むまだ流動性のある段階で,充てん剤や強化材に含浸し,さらに必要に応じ硬化剤を加え,型にはめ,熱と圧力を加えて成形する。一方,熱可塑性樹脂の成形は,樹脂を溶融流動化させ,成形機から型に入れ冷却,固化させる。前者が化学反応による硬化であるのに対し,後者は物理変化による硬化であり,いちじるしく生産性が高い。これが熱可塑性樹脂の急成長をとげた理由の一つである。

比較的低分子の物質(モノマー)を結合して,数千~数万の分子量をもつ高分子とする。高分子の合成方法として,重合,重縮合,重付加,付加縮合という基本反応が用いられる。重合とはエチレン,スチレン,塩化ビニルのように不飽和結合が開いて高分子化する例(1),ナイロンのように環状モノマーのε-カプロラクタムが開環する例(2)がある。

 重縮合はポリエチレンテレフタレートの重合がそのよい例であって,高分子化のさいに低分子(この場合は水H2O)が脱離する(3)。





重付加とはイソシアナート基-N=C=Oをもつ化合物によくみられる。

 付加縮合はホルムアルデヒドを用いる熱硬化性樹脂の合成がよい例である。

おもな特性を他の材料と比較すると,軽くてじょうぶなこと,電気抵抗が高いことが特徴である。また熱に弱い,燃えやすい,大きい荷重をかけると変形しやすい,水,溶剤に弱いものがある,などが欠点としてあげられる(表)。
プラスチック成形加工
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百科事典マイペディア 「合成樹脂」の意味・わかりやすい解説

合成樹脂【ごうせいじゅし】

人造高分子化合物のうちですぐれた可塑性を示すものの総称。実質的にはプラスチックと同義だが,成形品になるものだけをプラスチックという場合がある。工業的生産に成功したのは,1907年ベークランドが発明したフェノール樹脂(ベークライト)が最初で,シュタウディンガーが高分子化学の理論的体系を確立してから急激な展開が始まり,さらに石油化学工業の発展で原料の供給が豊富となるに及んで飛躍的に発展。大別すると熱可塑性樹脂熱硬化性樹脂に分けられるが,現在はそのほとんどが前者である。一般に成形,加工が他の材料に比べて容易で,軽く,耐水・耐油・耐薬品性にすぐれ,電気絶縁性がよく,透明なものや着色したものを自由に作ることができる。金属や木材などの従来の材料に代わって,日用雑貨,家具,建築材料,電気部品,工業材料などに広く利用されている。→強化プラスチックプラスチック工業
→関連項目合成化学工業陽イオン交換樹脂ラミネート

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化学辞典 第2版 「合成樹脂」の解説

合成樹脂
ゴウセイジュシ
synthetic resin

天然樹脂と対比して名づけられた合成高分子物質全体を意味する用語.天然樹脂に比べ,一般に分子量が高く,構成繰返し単位が単純であり,いわゆるプラスチックとして構造材料,精密機器部品,日常生活用品などに使われている.加熱により軟化し,溶融成形可能な熱可塑性樹脂と,一度加熱すると不溶不融となる熱硬化性樹脂に大別される.熱可塑性樹脂としては,ポリオレフィン類,ポリスチレンメタクリル酸樹脂,アクリル酸樹脂酢酸ビニル樹脂塩化ビニル樹脂ポリエステル樹脂,ナイロン(脂肪族ポリアミド樹脂),アセタール樹脂ポリカーボネートなどがあげられる.一方,熱硬化性樹脂としては,フェノール樹脂キシレン樹脂メラミン樹脂尿素樹脂エポキシ樹脂不飽和ポリエステル樹脂などがある.

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「合成樹脂」の意味・わかりやすい解説

合成樹脂
ごうせいじゅし
synthetic resin

天然樹脂に対する名称。合成高分子のうち,合成繊維,合成ゴム以外のものをいうが,皮膜など区別が明確でないものが多く,合成高分子全体を意味することもある。可塑性をもっており,加工しやすく,軽く,電気や熱の絶縁性のよいものが多い。合成樹脂として,フェノール樹脂,メラミン樹脂のような熱硬化性樹脂,ポリエチレン,ポリ塩化ビニル,ポリスチレンのような熱可塑性樹脂など,用途に応じて非常に多くの種類が生産されている。

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栄養・生化学辞典 「合成樹脂」の解説

合成樹脂

 石油や天然ガスの成分を原料として合成する高分子化合物.天然の高分子化合物を加工して製造するものも含まれる.

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「合成樹脂」の意味・わかりやすい解説

合成樹脂
ごうせいじゅし

プラスチック

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