し‐みず ‥みづ【清水】
[1] 〘名〙 清らかなわき水。清らかに澄んだ水。すみず。《季・夏》
※書紀(720)神代下(鴨脚本訓)「門の前に一つの好井(シミツ)有り」
※新古今(1205)夏「道の辺に清水流るる柳蔭しばしとてこそ立ちどまりつれ〈西行〉」
[2]
[一]
狂言。各流。
茶の湯の水をくみにやらされた太郎冠者が、鬼が出たといって途中で逃げて来る。落として来た
手桶(ておけ)が惜しいと主が清水に行くと、太郎冠者が鬼の面をかぶって現われておどすが、声に不審を抱いた主に面を取られて逃げるという筋。「天正狂言本」で「
野中の清水」、「狂言記」で「
鬼清水」。
[二]
静岡市の行政区の一つ。古代から東海道の宿駅、駿府の外港として発達。江戸時代は
江尻、興津が東海道五十三次の宿駅となり、廻船問屋四二軒が免許され、水軍(船手組)の
基地、甲州廻米の積出しで栄えた。現在は清水港を中心とする港湾・工業地区。日本平、
三保松原など、観光地も多い。
[語誌]((一)について) (1)和歌では、古くは「野中の清水」「おぼろの清水」など歌枕として詠まれることが多く、「逢坂の関の清水」であれば「恋」や「羈旅」の歌であった。それが「堀河百首」で夏十五首の中に「泉」題が設けられ、「六月に岩もる清水結ばずはあふぎの風を忘ましやは〈藤原公実〉」などと詠まれるに及んで「夏」に涼を呼ぶものとなる。
(2)「堀河百首」はその後の歌人達に大きな影響を与えたが、特に挙例の「新古今集」の西行の歌は、謡曲にも採られるなど広く世に知られ、「奥の細道」でも芭蕉はその残る柳に立ち寄っている。
(3)俳諧の季語としては、「清水結ぶ」あるいは「清水せく」で「夏」としており、「清水」は「雑」とされた。しかし、江戸中期の「俳諧・滑稽雑談‐六月」では「清水」だけでも「夏」としている。
きよ‐みず ‥みづ【清水】
[1] 〘名〙
① 清らかな水。しみず。
[2]
※蜻蛉(974頃)下「十八日に、きよみづへまうづる人に、又しのびてまじりたり」
[二] 東京都台東区上野公園にある観音堂。寛永八年(一六三一)天海が建立。
[三] 大阪市天王寺区伶人町にある和宗の寺、清水院のこと。四天王寺の塔頭(たっちゅう)の一つで、寛永一七年(一六四〇)京都清水寺を勧請し建立。有栖山清水寺とも称した。慈覚大師作と伝える千手観音を本尊とする。高台に懸造りの舞台を設け、景色がよいことで知られる。新清水寺。新清水。
※浮世草子・新色五巻書(1698)四「手分して尋廻り勝曼にて見附、皆々悦(よろこび)連れ立帰り、清水(キヨミヅ)の茶屋に十右衛門と女房、高笑ひして茶飲み物語」
せい‐すい【清水】
〘名〙
① 濁りのないすんだきれいな水。しみず。〔運歩色葉(1548)〕
※花柳春話(1878‐79)〈織田純一郎訳〉四六「恰も砂漠の中に清水
(セイスイ)を得るが如しと」 〔淮南子‐

形訓〕
② (形動) きわめてあきらかなこと。はっきりしたさま。
※日葡辞書(1603‐04)「Xeisuini(セイスイニ) ヲウセツケラルル」
せ‐みど【清水】
〘名〙 「しみず(清水)」の上代東国方言。
※万葉(8C後)一四・三五四六「青柳の張らろ川門(かはと)に汝を待つと西美度(セミド)は汲まず立ちどならすも」
す‐みず ‥みづ【清水】
〘名〙 すんだ水。しみず。
※琴歌譜(9C前)七日あゆだ振「高橋の 甕井(みかゐ)の須美豆(スミヅ) あらまくを すぐにおきて 出でまくを」
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報
清水
しみず
静岡県中部,静岡市南東部の旧市域。駿河湾に面する。1924年市制。1954年飯田村と高部村,1955年有度村,1961年袖師町,興津町,庵原村,両河内村,小島村の 5町村を編入。2003年静岡市と合体して静岡市となり,2005年政令指定都市化に伴い全域が清水区となった。南東部に三保半島が北東に突出し,自然の防波堤をつくる。西部は静岡平野につながり,北部は庵原山地。中心市街地は江戸時代に東海道の宿場町だった江尻と,駿府の外港の清水からなる。清水港は遠洋漁業の基地であるとともに国際貿易港。1899年開港場となり,1952年には特定重要港湾に指定され,2011年国際拠点港湾となった。港を囲んで缶詰などの食品加工,造船,機械,化学,製油,製材,合板などの工業地区が成立している。周辺の農村部ではチャ(茶),ミカンの栽培,野菜の促成栽培,久能山の石垣いちご栽培などが行なわれる。袖師は江尻と興津間の東海道沿いに位置し,かつては半農半漁村であり,また海水浴場でもあった。1939年埋立地に石油精製所ができ,石油コンビナートの基地となっている。興津は東海道の宿場町であり,清見寺(庭園は国指定名勝)がある。海岸は清見潟と呼ばれる景勝地であったが,清水港の外延として興津埠頭があり,輸出用自動車,コンテナなどが並ぶ。日本平・三保の松原県立自然公園に属し,日本平,三保の松原(いずれも国指定名勝),梅蔭寺(清水次郎長の墓),龍華寺のソテツ(国指定天然記念物),国宝の法華経を蔵する鉄舟寺がある。
清水
しみず
福井県北部,福井市南部の旧町域。福井平野西部にある。1955年志津村,三方村,天津村の 3村が合体,町制施行。2006年福井市に編入。地名は 3村から各 1音をとり,地域内にある清水という地名の字にあてた。米作が中心であったが減反政策のため農業の多角化が進む。菅笠を産する。福井市中心部への通勤者が多く,ベッドタウン化が著しい。中部の大森にある賀茂神社で 4年ごとに行なわれる睦月神事は国指定重要無形民俗文化財。
清水
しみず
高知県南西部,太平洋にのぞむ土佐清水市の中心市街地。旧町名。 1954年近隣3町と合体して土佐清水市となる。足摺半島西岸の溺れ谷にある良港で,大正期からカツオ,マグロ漁業の基地として栄えたが,現在は土佐沖,足摺近海の釣漁業を中心にかつお節,めじか節などの加工を行う。足摺宇和海国立公園の観光基地でもある。
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デジタル大辞泉
「清水」の意味・読み・例文・類語
しみず【清水】[狂言]
狂言。茶の水をくみに行かされた太郎冠者が、鬼に手桶を取られたと偽って帰り、手桶をさがしにいった主人を鬼に化けて脅すが、声で見破られる。
しみず【清水】[静岡市の区]
静岡市の区名。旧清水市・旧蒲原町・旧由比町域を占める。茶の輸出港として発展。三保の松原、日本平などの景勝地がある。
きよ‐みず〔‐みづ〕【清水】
せい‐すい【清水】
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しみず【清水】
狂言の曲名。太郎冠者狂言。大蔵・和泉両流にある。茶の湯の会の準備のため,主人は太郎冠者を野中の清水へ水汲みにやる。太郎冠者は,来客のたびに水汲みをさせられるのはかなわないと思い,清水に鬼が出たとうそをついて水も汲まずに戻ってくる。不審に思った主人が清水まで見に行くので,太郎冠者は先回りして鬼の面をつけて待ち伏せる。一度は主人も恐れおののくが,鬼がなにかと太郎冠者をひいきにするのと,その声が太郎冠者に似ていたのに気づき,再度清水へ出かけ,またも鬼に扮して現れた太郎冠者の面をはがして追いこむ。
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清水
しみず
[現在地名]塩沢町清水
登川最上流の集落で、早川村枝村。清水峠北麓にあたり、集落は清水道沿いにある。集落は北方に清水道を通じてわずかに開けるのみで、黒岩峰(別名大明神山)・割引岳(別名わりめき山)・巻機山・威守松山(別名あづま山)・米子頭山・柄沢山・檜倉山・大烏帽子山・七ッ小屋山・大源太山・無黒山など二〇〇〇メートル近い高山に囲まれる。関東への出入口を扼する要地で、集落南方約五〇〇メートルには清水城跡がある。
清水
しみず
[現在地名]姫路市本町
姫路城北側の中曲輪に位置する武家地。町名は小野江の清水・鷺の清水などの名水が湧いていたことから名付けられたという(大正八年刊「姫路市史」)。播磨国衙巡行考証(智恵袋)に「姫山 八代、中の村にかかれり」「鷺山の城に鷺の清水三間四方あり、名水、八代の地内也」とある。慶長六年(一六〇一)の町割で八代村南部が中曲輪の区画内に取入れられて町場化した。東は野里門筋近くから西は清水門までの広い町域で、同五―八年の姫路城郭図には九〇軒近い屋敷がみられる。元禄一一年(一六九八)写の本多家家中侍屋敷図(姫路城史)に、野里門内西方藪端(中堀沿い)、東上ノ町、西上之町、東中ノ町、西中之町、清水門より野里門まで藪端(内堀沿い)に分けて九五軒の侍屋敷を載せる。
出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報
世界大百科事典内の清水の言及
【大野[市]】より
…街路中央に水路を通じて火災・積雪に備えた。清滝川旧扇状地の末端を占め,地下水が豊富で今もいたるところに清水(しようず)がみられ,炊事,洗濯などの生活用水となるが,近年は工場のくみ上げ過剰で井戸がれが起きている。近世からの絹織をつぐ機業が盛んで,昭和初めに人絹から化合繊にかわったが,近年は電気機器工業が発展している。…
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