日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
ジャングル(シンクレアの小説)
じゃんぐる
The Jungle
アメリカの作家アプトン・シンクレアの長編小説。1906年刊。『理性への訴え』誌からの依頼で、シカゴ缶詰工場の内情を調査し、その結果を小説化したもので、一種の暴露小説である。リトアニアの移民ユルギスは、缶詰工場で過酷な労働条件のもとで働いている。共働きの妻オーナが上役の手ごめにあったとき、彼はそのボスを殴って投獄される。出獄してみると妻は産褥(さんじょく)熱で死に、嬰児(えいじ)も死亡。希望を失い、一時自暴自棄になるが、結局ユルギスは社会主義に生きる道をみいだす。小説の構成としては後半が安易に流れているが、ここに描かれた缶詰製造過程の非衛生的実態がセンセーションを巻き起こし、政府は工場の衛生管理に乗り出さねばならなかった。
[板津由基郷]
『木村生死訳『ジャングル』(1950・三笠書房)』
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