ボス(英語表記)Hieronymus(Jheronimus)Bosch

精選版 日本国語大辞典 「ボス」の意味・読み・例文・類語

ボス

〘名〙 (boss)
① 集団の上に立って実権を握っている人。長。かしら。顔役。上司。特に、やくざの親分や犯罪者の首領。また、政界の実力者。
※欧米印象記(1910)〈中村春雨〉加州雑記「元はドクトルが住んでゐたとかいふ、今は人夫取締(ボス)の住家だと後に知れた」
車両ハンドル、車などの軸がはまる穴を補強、固定するために取りつけた縁(ふち)

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デジタル大辞泉 「ボス」の意味・読み・例文・類語

ボス(boss)

親分。親玉。顔役。「政界のボス
組織・部署の長。上司。「うちのボス
車輪などで、軸の取り付けを補強するための円筒形の軸心部分。
[類語](1ちょうおさかしらトップ大将主将闇将軍親方親分親玉棟梁首領頭目ドン

ボス(Voss)

ノルウェー南西部の町。バングス湖に面する。オスロベルゲンからのフィヨルド観光の中継地点にあたる。スキーリゾートとしても知られる。

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改訂新版 世界大百科事典 「ボス」の意味・わかりやすい解説

ボス
Hieronymus(Jheronimus)Bosch
生没年:1450ころ-1516

ネーデルラントの画家。ボッシュ,ボッスともいう。彼の本名はイェルーン・ファン・アーケンJeroen van Akenだが,彼は名をラテン語化し,姓は出身地ス・ヘルトーヘンボスの一部をとり,署名とした。ス・ヘルトーヘンボスで,画家ファン・アーケンA.van Akenの第3子として生まれる。1486-87年ころシント・ヤン大聖堂の〈聖母マリア兄弟会〉(聖職者と平信徒によって構成され,ス・ヘルトーヘンボス市の宗教ならびに文化活動に貢献する団体)の会員となる。生涯,敬虔なキリスト教徒として同兄弟会のために,安い謝礼で新礼拝堂用のステンド・グラスの下絵,主祭壇画枠縁の彩色と金箔,シャンデリアのデザイン,典礼用祭服の十字架の刺繡の図案などを制作する。こうした事実は,ボスが異端〈ホミネス・インテリゲンティアエ〉に属していたというフレンガーW.Fraenger説(1947)を覆す有力な証拠となろう。

 作品には年記がなく,その制作活動は大きく3期に分けられる。初期(1475-85)の《七つの罪源》で,従来の擬人像表現ではなく,とくに庶民の日常生活の営みの中に罪源の様態を表した点はユニークであった(例,〈貪欲〉では当時の巡回裁判と賄賂の実態を描く)。中期(1485-1505)の風俗画《愚者の船》には,〈青いボート〉と呼称された祭りの企画団体やJ.ファン・ウーストウォレンの詩《青いボート》などを示唆する風刺的表現がみられる。彼の三大祭壇画の一つ《乾草の車》では,外側に〈放浪の旅人〉,内側に〈原罪〉〈乾草の車〉〈地獄〉を描いたが,とくに乾草の争奪戦にみられる,現世の人間の貪欲や激怒の罪源を強調する。第2の祭壇画《聖アントニウスの誘惑》では,後に〈魔物キマイラの創作者〉(デ・ゲバラ,1560ころ)と評されたように,絵画史上類をみない人間と動物の合成生物,爬虫類と獣類の混合物による幻想的世界を展開した。後期(1505-16)の祭壇画《快楽の園》はボスの最高傑作とみなされている。彼は内側の中央パネルに,裸体の男女の倒錯した性や植物と鉱物を組み合わせた奇怪な建物を描くなど,中世末期の同時代の画家からはるかに飛躍した特異なイメージの世界に到達する。右翼の〈地獄〉の,巨大な楽器の拷問具,樹幹人間,爆発で炎上する町のシルエットなどの意表をつくモティーフは,16世紀フランドルの数多くの地獄図に踏襲された。
執筆者:

ボス
Medard Boss
生没年:1903-90

スイスの精神科医,精神分析医。チューリヒ大学医学部卒業。E.ブロイラーに師事。S.フロイトならびにユングから直接の影響を受ける。1950年前後からは哲学者ハイデッガーと親交を結ぶにいたる。彼は《存在と時間》にはじまるハイデッガーの思想が,従来の医学界において支配的であった機械論的・心身二元論的人間観を克服し人間理解への新しい地平を開いたと考え,ハイデッガーの思想を精神医学的な人間理解に忠実に適用した。この試みの中で,フロイトの技法論の中にみられる治療観は,ハイデッガーの現存在分析論とほとんど完全に一致することを強調する一方,フロイトのその他の理論構成は,むしろ人間理解を妨げる機械論として厳しく批判している。彼は精神医学における〈人間学派〉の代表者の一人とみなされるが,この派に属するL.ビンスワンガー,V.E.vonゲープザッテルらが治療的虚無主義に傾いたのに対し,むしろ楽観主義的な治療実践家である。大著《医学概論》(1971)を除く彼の主著,《性的倒錯》(1947),《夢--その現存在分析》(1953),《精神分析と現存在分析論》(1957)などはほとんどすべて邦訳されている。
執筆者:

ボス
Abraham Bosse
生没年:1602-76

フランスの版画家,出版者。トゥールに生まれパリに没する。1629年ころパリでJ.カロに出会い技法のうえで影響を受ける。複製版画,創作版画を手がけ,その主題は宗教,科学,歴史,肖像などに及び,当時の社会風俗をよく伝えている。後半,これまでの版画技法を網羅し後世の版画論の規範となった《銅版画法》(1645)や絵画・建築論等多岐にわたる著作を出版。挿絵も描いている。
執筆者:

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百科事典マイペディア 「ボス」の意味・わかりやすい解説

ボス

初期ネーデルラントの代表的画家。ボッシュともいう。本名イェルーン・ファン・アーケンJeroen van Aken。ボスの名は出身地ス・ヘルトーヘンボスの一部からとられた。画家の子として生まれ,1486年―1487年ころシント・ヤン大聖堂の聖母マリア兄弟会の会員となり,さまざまな仕事を手がけた。宗教画,寓意(ぐうい)画,風俗画等を得意とし,精緻(せいち)な写実的手法と独特の奇怪・奔放な幻想とを配合し,シュルレアリスム絵画につながる要素をもつ。ブリューゲルに与えた影響も大きい。代表作にマドリードのプラド美術館所蔵の《乾草の車》(1485年―1505年ころ)《快楽の園》(1505年―1516年ころ)のほか,《最後の審判》(1485年―1505年ころ,ウィーン,美術大学付属美術館蔵),《愚者の船》(1485年―1505年ころ,ルーブル美術館蔵)などがある。
→関連項目ウィーン幻想派

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ボス」の意味・わかりやすい解説

ボス
boss

非公式な形で実質的な権力と影響力を有している人間をいう。たとえば,特定の集団や地域社会において隠然たる勢力をもって人々の動向を支配し,また世論を左右する人間がボスである。日本では,親方,親分,黒幕的人物,大御所などと呼ばれている人間である。また,アメリカの政界では,ボスは公職の候補者指名や選挙運動に影響を与え,官職の情実的任免に介入し,政治資金網を動かすなど,非常に重大な政治的機能を演じている。そして歴代大統領の背後には常にこのようなボスが存在したといわれる。

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367日誕生日大事典 「ボス」の解説

ボス

生年月日:1780年2月2日
オランダ東インド総督(在任1830〜33)
1844年没

ボス

生年月日:1903年10月4日
スイスの精神医学者
1990年没

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デジタル大辞泉プラス 「ボス」の解説

ボス

サントリーホールディングス株式会社が販売するコーヒー飲料のブランド。1992年発売。

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「ボス」の解説

ボス

ファン・デン・ボス

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岩石学辞典 「ボス」の解説

ボス

岩株

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世界大百科事典(旧版)内のボスの言及

【マシーン】より

…地方の党組織は,選挙において多くの票を獲得するために活発な日常活動を行っている。この地方の党組織を牛耳っているのが,ボスと呼ばれる指導者である。マシーンという言葉は,党の組織が,ボスの命令に従って自動的に機械のように操縦されることから名づけられたものである。…

【オランダ美術】より

…西正面に接して単独で高くそびえ立つ同大聖堂の塔(1382完成)は多くの追随を生み,以後,塔はオランダ建築の特徴の一つとなった。14世紀にはハレンキルヘがドイツから伝わり,また煉瓦を主建材とし木造円筒ボールトを備えたフランドル・ゴシック式教会堂が北海沿岸地域に広く普及した(デルフトの旧教会など)が,同世紀後半からは石材を用いたより大規模なブラバント・ゴシック建築が優位を占め,15世紀にはいっていっそうの発展を見せる(ス・ヘルトーヘンボスの聖ヤン教会ほか)。ゴシックの伝統は教会堂建築において以後も長らく保たれ,その超克には17世紀の到来を待たねばならなかった。…

【風刺画】より

…たとえば,修道士が糸巻棒でふいごを操れば,それに合わせて人妻が踊る,といった2人の仲を揶揄した作例(がそれである。また中世後期のボスは祭壇画《乾草の車》で,乾草の車に執着する随行員として,教皇,司教,王,貴族,下位聖職者だけでなく,市民や農民などあらゆる階級を描くことで,人間の心に潜む〈貪欲〉を暴き出している。 ルネサンス期ドイツでは,L.クラーナハが《不似合いなカップル》のテーマを量産し,老人とその財産目当ての若い娘との不自然な組合せを描き,当時の堕落した社会風俗を批判している。…

【風俗画】より

…他方,ベロネーゼは《レビ家の饗宴》(1573)で,華やかな饗宴,道化,酔漢,犬など主題に直接関係のない〈風俗的要素〉で画面を賑わしたため,異端審問所の召喚を受け,題名の変更を余儀なくされた。 北方ではH.ボスが《手品師》で騙(だま)されやすい人間,《阿呆船》で快楽にふける聖職者への風刺(つまり中世的な教訓)をこめながらも,宗教的枠組みから主題を解放した。ボスの伝統を継承するP.ブリューゲル(父)はフランドルの諺,子どもの遊戯,農民の婚宴や祝祭を表し,庶民のバイタリティ,日常の知恵,生活文化を記念碑化した。…

【フランドル美術】より

…海岸地帯では乏しい自然石のかわりに煉瓦を用いた木造穹窿(きゆうりゆう)の等高式教会堂(ハレンキルヘ)が生まれ,この形式は海岸沿いに北部ネーデルラントにも伝えられた。14世紀にはブラバント地方でゴシック様式が発展し,フランドル最大のアントウェルペン(アントワープ)大聖堂や幻想的な彫刻装飾をもつス・ヘルトーヘンボスの聖ヨハネ教会が建設された。華麗な末期ゴシックはその後も久しくフランドルの国民的建築様式として繁栄し,とりわけ尖頭アーチと彫像で壁面をおおわれ大小の塔をいただいた各地の市庁舎(ブリュッセル,ルーバン。…

【サディズム】より

…そしてサディスティックな行為が自己自身の感覚の増大を生じ,そのような感覚の変化が反復して求められるようになるのだと考える。これに対してゲープザッテルと同じく人間学派に属するM.ボスは,以上の見方に反対し,たとえゆがめられた形においてではあってもサディズムも恋愛的世界内存在可能性に到達しようとする試みであると解釈している。マゾヒズム【下坂 幸三】。…

※「ボス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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