日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
シュミット(Brian P. Schmidt)
しゅみっと
Brian P. Schmidt
(1967― )
天文学者。アメリカ合衆国モンタナ州のミズーラMissoula生まれ。13歳でアラスカ州のアンカレッジに移動。子供のころから気象学者になるのが憧れだった。1989年アリゾナ大学を卒業、1993年ハーバード大学で博士号取得。ハーバード・スミソニアン天体物理学センター研究員などを経て、2010年からオーストラリア国立大学特別教授となった。2011年に「遠方の超新星観測を通した宇宙膨張加速の発見」の業績により、カリフォルニア大学バークリー校のソール・パールマッター、ジョンズ・ホプキンズ大学のアダム・リースとノーベル物理学賞を共同受賞した。シュミットとリースは、同じ超新星観測プロジェクト・チームHigh-z Supernova Search Teamに参加していた。
従来は、宇宙が膨張するその果てでは、膨張速度が衰えていくと推測されていた。パールマッターのプロジェクトチームSupernova Cosmology Projectは、観測結果から膨張速度は逆に急激に加速していることを解明、1998年に発表した。くしくも同じ1998年、シュミットとリースらの研究チームも、Ⅰa型超新星の観測から超新星の明るさが、これまで考えられてきた減速膨張宇宙の予想よりも暗くなっていることを発見し、宇宙の膨張は急加速で勢いを増していくことを解明し、同様の観測結果を発表した。
「宇宙が加速して膨張する原理は何か」という問いに、現在の観測結果や物質だけでは説明ができない。彼らの研究により、宇宙には星や銀河が互いに引き合う重力を上回る大きさで宇宙を押し広げていく力があることが周知され、その力の源泉は「暗黒エネルギーdark energy」と名付けられた。その正体については、世界中で新たな研究競争が展開されている。シュミットは、ノーベル賞受賞後の記者会見で「宇宙膨張には、外に向けた大きな暗黒エネルギーが必要であり、この未知のエネルギーの存在を突き止めることが、宇宙物理学の最大のテーマになった」と語っており、2012年時点で、南天の観測と地図化を進めるスカイマッパーSky Mapper天体観測プロジェクトのリーダーを務めている。
[馬場錬成]