改訂新版 世界大百科事典 「シダ(羊歯)種子類」の意味・わかりやすい解説
シダ(羊歯)種子類 (しだしゅしるい)
seed ferns
裸子植物の絶滅綱Pteridospermopsida。葉はシダ型の羽状複葉だが,繁殖器官として胞子囊ではなく種子を葉につける。種子植物の出発点となる植物で,古生代後期に大発展をとげた。中生代に一部を残したが,大部分は古生代末に絶滅したと考えられている。繁殖器官をつけない葉ではシダ類と区別がつかず,両者を合わせてシダ状葉fern like frondsとしてペコプテリスPecopteris,スフェノプテリスSphenopterisなどの形態属が使用されている。種子は大胞子葉につくが,石炭紀においては胞子葉が集合して球果をつくることはなく,球果をつくった小葉類や有節類とは明りょうに別系統であることを示している。ソテツ型の茎とシダ型の葉をもつことからソテツシダ類とも呼ばれたが,現在ではシダ型の葉に種子をつけた植物という意でシダ種子類の名が使用されている。デボン紀末にアルカエオスペルマArchaeospermaと名づけられた最初の種子が発見報告されたが,これ以外は全部石炭紀以降に出現した。
幹の構造により真正中心柱型のリギノプテリス目Lyginopteridalesと,多条中心柱型のメデュロサ目Medullosalesに分けられる。化石標本は茎,葉,種子,繁殖器官など別々に発見され,別々の名前(形態属名)がつけられている。リギノプテリス目では茎はヘテランギウムHeterangiumまたはリギノプテリスLyginopteris,葉はスフェノプテリス,雌花器はラゲノストマLagenostoma,雄花器はクロッソテーカCrossotheca,メデュロサ目では茎はメデュロサMedullosa,葉はニューロプテリスNeuropterisまたはアレソプテリスAlethopteris,雌花器はコドノスペルマムCodonospermum,ステファノスペルマムStephanospermum,雄花器はコドノテーカCodonotheca,ウィトレセヤWittleseya,ポトニエアPotonieaなどと呼ばれる。中国や朝鮮ではスフェノプテリス,ペコプテリス,アレソプテリス,エンプレクトプテリスEmplectopterisなどの葉に種子のついた化石が報告されているが,日本では古生代の植物の産地は少なく,種子をつけた葉は発見されていない。
南半球ゴンドワナ大陸の主要植物であるグロッソプテリス目Glossopteridalesもシダ種子類で,葉はグロッソプテリスGlossopteris,ガンガモプテリスGangamopterisの2形態属にまとめられているが,繁殖器官は種々さまざまで,とても2属にまとめられない。グロッソプテリス類は単葉で2次脈が細脈となり網目をつくる。南半球のグロッソプテリス類に対応するのは北半球のカタイシア植物群のギガントプテリス類Gigantopteridalesで,同じく単葉で3次脈,4次脈が細脈となり網目をつくるのが特徴である。カタイシア植物群では,3回羽状複葉のエンプレクトプテリスが,2回羽状複葉のギガントノクレアGigantonoclea,1回羽状複葉のビコエンプレクトプテリスBicoemplectopterisへ,ついで単葉のトリコエンプレクトプテリスTricoemplectopterisへと進化したことが判明している。エンプレクトプテリスは,葉に種子をつけた化石がたくさん発見されているので,シダ種子類であることは疑いない。単葉は羽状複葉から段階的に分枝を減ずることにより導かれるので,環境が悪化したことを意味している。南半球の単葉グロッソプテリス類は寒冷気候が原因となって出現し,カタイシア植物群の単葉ギガントプテリス類は大陸化による乾燥気候が原因となって出現したものと考えられている。グロッソプテリス類もギガントプテリス類も単葉を示し,新生代に栄えた花の咲く被子植物の祖先系と考えている学者もある。
執筆者:浅間 一男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報