家庭医学館 「サルモネラ食中毒」の解説
さるもねらしょくちゅうどく【サルモネラ食中毒】
サルモネラ菌は2000種類くらいあり、そのうち腸チフス菌とパラチフスA菌は感染力が強いだけではなく、経口感染したのち血液中に入って増殖(ぞうしょく)し、発熱その他の重い全身症状をおこすので、腸チフス、パラチフスA(「パラチフス」)という独立した病気として扱われています。それ以外のサルモネラ菌は、経口(けいこう)感染後、腸で繁殖(はんしょく)し毒素を生産します。この毒素のために小腸の粘膜(ねんまく)に炎症が生じ、発熱、嘔吐(おうと)、下痢(げり)がおこります。これがサルモネラ食中毒です。
●多発する季節と年齢
多発するのは、8月をピークとする5~10月の間ですが、年間を通じての発生がみられます。集団発生のほか、家族内発生や散発的な発生もあります。
かかりやすいのは5歳以下の幼児ですが、すべての年代の人が要注意です。
[症状]
潜伏期は10~20時間です。おとなは、発熱、嘔吐、腹痛、下痢などですが、嘔吐はなく、下痢が主になることもあります。ふつう、1週間ほどで回復しますが、ショック状態におちいることもあります。
乳幼児は、とくにけいれん、ショックをおこし、重症になりがちです。
[治療]
輸液や化学療法薬の内服をします。症状が消えても、長期間、排菌(はいきん)が続くことがあるので、予防策を講じることがたいせつです。
[予防]
サルモネラ菌は、病人や保菌者の糞便(ふんべん)中に含まれています。イヌ、ネコ、ニワトリ、ネズミ、ゴキブリは、もっているだけではなく、運搬もします。これらのものに、食品を汚染されないように貯蔵しましょう。
食肉や鶏卵には菌が付着していることも多いので、加熱して食べるようにしましょう。