日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
グロスマン(Vasiliy Semyonovich Grossman)
ぐろすまん
Василий Семёнович Гроссман/Vasiliy Semyonovich Grossman
(1905―1964)
ロシアの小説家。モスクワ大学数学科卒業。炭鉱労働者の人生を描いた『ステパン・コリチューギン』(1940)で認められ、第二次世界大戦に『赤い星』紙記者として従軍、『人民は不滅』(1942)を書いた。戦後、戯曲『ピタゴラス学派を信ずるなら』(1946)で思想的偏向を批判され、スターリングラード(現ボルゴグラード)の戦いを扱った長編『正義の事業のために』(1952)は、党機関紙から「イデオロギー的に有害」と非難された。スターリン時代の圧政、反ユダヤ主義をついた続編『生活と運命』(1960)は1980年にようやく国外で刊行された。邦訳された中編『万物は流転する…』も旧ソ連国内では日の目をみなかった。
[江川 卓]
『内村剛介編、中田甫訳『現代ロシヤ抵抗文集第6 万物は流転する…』(1972・勁草書房)』