クロナマコ(英語表記)Holothuria atra

改訂新版 世界大百科事典 「クロナマコ」の意味・わかりやすい解説

クロナマコ
Holothuria atra

ナマコ綱クロナマコ科の棘皮(きよくひ)動物。別名クロシキリ。吐噶喇列島以南の熱帯水域に広く分布し,沖縄や小笠原などの浅瀬のサンゴ砂の上ではふつうに見られる。食用にはしない。体長25cm内外で,全身が真っ黒であるが,体表から分泌する粘液で細かい砂を全身,または部分的につけていて,砂の付着しない部分が斑点模様になっている。口の周囲に20本の触手が並び,食道を囲む石灰環は10個の骨板からなる。背面にいぼ足,腹面管足がある。体内にはキュビエ管をもっていない。近似種のニセクロナマコH.leucospilotaは黒に近い濃褐色で,体表面には砂をつけない。キュビエ管がよく発達していて,強い刺激を受けるとすぐ体外へ放出する。伊豆七島以南に分布する。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「クロナマコ」の意味・わかりやすい解説

クロナマコ
くろなまこ / 黒海鼠
[学] Holothuria (Halodeima) atra

棘皮(きょくひ)動物門ナマコ綱クロナマコ科に属する海産動物。サンゴ礁砂地に群生する中形で黒色のナマコ。体色は漆黒であるが、体表に粘液を分泌し、全身粉をまぶしたように白い砂粒をつけている。また、砂がむらになってつき、地色が黒斑(こくはん)になってみえるものもある。体はやや細めの筒形で、全体が柔らかい。体表に目だった凹凸はなく、腹面に小さな管足、背面に細かいいぼが多数ある。体長20~50センチメートル。触手は20本。南西諸島以南、インド洋、西太平洋のサンゴ礁海域に分布。沖縄地方では、深みにいる大形で肉厚のものをとり、乾製品として食用にする所もある。

[重井陸夫]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「クロナマコ」の意味・わかりやすい解説

クロナマコ
Holothuria atra

棘皮動物門ナマコ綱楯手目クロナマコ科。体長 25cm内外。全身真黒で,体表から出される粘液で全体あるいは部分的に砂をかぶっている。背面に疣足 (いぼあし) ,腹面にそれとほぼ同大の管足がある。口のまわりには触手が 20本あり,また食道を囲む石灰環は 10個の骨板から成る。キュビエ氏管はない。吐 噶喇 (とから) 列島以南の太平洋,インド洋域のサンゴ礁にすむ。

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