カヤ(イチイ科)(読み)かや(英語表記)japanese plum-yew

日本大百科全書(ニッポニカ) 「カヤ(イチイ科)」の意味・わかりやすい解説

カヤ(イチイ科)
かや / 榧
japanese plum-yew
[学] Torreya nucifera (L.) Sieb. et Zucc.

イチイ科の常緑針葉高木。大きいものは高さ36メートル、直径2.5メートルに達する。樹皮は青灰色、滑らかで、老木では薄く縦にはがれる。若枝は緑色。葉は水平に2列に並び、線形で過半部が膨らみ、先は鋭くとがり、厚くて堅く、表面は濃緑色で光沢があり、裏面の中央脈の両側には2本の黄白色の気孔線がある。雌雄異株。雄花は黄色で楕円(だえん)形をなし、裏面の葉の付け根に並んで多数開く。雌花小枝の先に群がってつき、柄はなく、数層の細かい鱗片(りんぺん)があり、中央に1個の胚珠(はいしゅ)がある。果実は長さ2~3センチメートル、径1~2センチメートルの楕円形で、肉質の仮種皮で全部覆われ、初め緑色、翌年9~10月ごろ熟して紫褐色となる。種子は楕円形、淡褐色で堅く、木質両端がとがる。材は木理がまっすぐ通り、堅硬、緻密(ちみつ)で美しい。弾性が強く加工が容易で耐腐朽性も強く、建築、器具、船舶、車両、彫刻などに利用され、とくに碁盤、将棋盤には珍重される。木は庭園樹とする。

 陰樹で、日陰地でも稚樹が生え、適潤地によく育ち、谷あいなどでもっともよく育つ。本州、四国、九州および朝鮮の済州島に広く自生する。名は、古名カヘの転訛(てんか)であるという。漢字名の榧は中国産の別種であるが、慣用で日本産カヤにも使われる。変種チャボガヤはおもに日本海側の山地に分布し、低木状で枝からよく発根し叢生(そうせい)する。

[林 弥栄


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例