エカチェリナ[2世](読み)エカチェリナ

百科事典マイペディア 「エカチェリナ[2世]」の意味・わかりやすい解説

エカチェリナ[2世]【エカチェリナ】

ロシア女帝(在位1762年―1796年)。ドイツのアンハルト・ツェルプスト公の娘。ピョートル3世に嫁し,近衛連隊のクーデタで夫を殺害して即位,啓蒙専制君主をもって任じた。プガチョフの乱を鎮圧,農奴制を極限にまで強化した。黒海沿岸,北カフカスを獲得し,ポーランド分割に参加。
→関連項目エルミタージュ美術館啓蒙絶対主義スタニスワフ・アウグスト・ポニャトフスキ大黒屋光太夫パイジェロパーベル[1世]ポチョムキンラクスマン

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世界大百科事典 第2版 「エカチェリナ[2世]」の意味・わかりやすい解説

エカチェリナ[2世]【Ekaterina II Alekseevna】

1729‐96
ロシアの女帝。在位1762‐96年。〈大帝〉とよばれる。ドイツのアンハルト・ツェルプスト公家に生まれ,1745年ロシア皇太子ピョートル(3世)に嫁し,62年宮廷革命で即位した。若いころからの派手な愛情生活で知られ,34年の在位中も近衛士官で宮廷革命の功労者オルロフG.G.Orlovをはじめ10人の公式の愛人をもったが,彼らに政治をまかせることはなかった。即位直後,外交官出身の有力政治家パーニンN.I.Panin伯が常設諮問機関の設置を示唆したが,君主専制を志向する女帝はこれを退けた。

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世界大百科事典内のエカチェリナ[2世]の言及

【ウクライナ】より

…18世紀初め北方戦争の最中,ヘトマンのI.S.マゼパ(1644‐1709)はロシアからの独立をはかってスウェーデンのカール12世と連合してロシアと戦ったが,ピョートル大帝に敗北し(1709年,ポルタワの戦),ウクライナの自治は制限されていった。エカチェリナ2世はウクライナ・コサックに対する攻撃を強化し,1764年にはヘトマンという役職とその政府を廃止した。75年にはザポロージエの本営に依拠して抵抗していたコサックを征服し,本営を破壊した。…

【啓蒙絶対主義】より

…この時代フランスを中心に展開した啓蒙思想を,君主自身が〈上からの近代化〉のために採り入れ,官僚行政の拡充を通じて,さまざまの改革を試みたもの。これを代表する君主には,フリードリヒ2世(大王),ヨーゼフ2世などがあり,初期のエカチェリナ2世もそれに含められる。 啓蒙絶対主義の思想的源流のひとつは,フランスの重農主義者が唱えた〈合法的専制主義despotisme légal〉に見いだされるが,その意味するところは,君主を啓蒙して〈自然の理法〉を信奉せしめ,独裁権力による立法活動を通じて,伝統的な諸特権を排除することにより,この自然法則を社会に貫徹させることにあった。…

【女帝】より

…マリア・テレジアは巧みな外交政策によって夫(フランツ1世)の共同統治者としての帝位を確保し,啓蒙専制君主と呼ばれるにふさわしい施策を行った。ついでロシア帝国に現れた〈女帝〉エカチェリナ2世(在位1762‐96)は,ドイツの小公国の出身でありながら,夫(ピョートル3世)を宮廷革命によって廃してみずから帝位についた。彼女も啓蒙専制君主を自認する政策を展開したが,晩年は農奴制を強化するとともにポーランド分割に積極的に加わり,ツァーリズムの再編に一役買った。…

【ロシア帝国】より

… 帝国の歴史は18世紀と19世紀に分けることができ,19世紀はさらにクリミア戦争(1853‐56)でその前と後に分かれ,19世紀末~20世紀初めが帝政末期になる。18世紀のロシアは軍事技術から思想,風俗までヨーロッパの文物・制度を貪俗に吸収し,啓蒙専制君主エカチェリナ2世の時代にある意味で模範的な絶対主義国になり,ヨーロッパの一大強国に発展した。しかし女帝の晩年にはフランス革命がおこり,イギリスの産業革命も始まっており,19世紀初めにはナポレオンのモスクワ遠征があった。…

【ロマノフ朝】より

…ロマノフ家は古くからの名門貴族で,16世紀以来ロマノフを名のり,リューリク朝のツァーリ,イワン4世の妃アナスタシアはその出身で,彼女の甥の子がミハイルである。 18人の皇帝のなかで,大帝といわれるのはピョートル1世エカチェリナ2世の2人だけであるが,300年のロマノフ朝の歴史は,この2人の治世とその前後の3時期に分けられるであろう。ピョートル1世までは王朝の創設期であり,基礎がつくられた時期である。…

※「エカチェリナ[2世]」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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