イソツツジ(英語表記)Ledum palustre L.ssp.diversipilosum (Nakai) Hara

改訂新版 世界大百科事典 「イソツツジ」の意味・わかりやすい解説

イソツツジ
Ledum palustre L.ssp.diversipilosum (Nakai) Hara

高層湿原に生えるツツジ科の常緑低木。夏,枝先に白色の小さな花を密につける。下部から多くの枝を分けて広がった株を作り,高さ30~100cmになる。若枝には赤褐色の長毛が密生する。葉は互生し,短い柄があり,狭披針形で長さ3~5cm,幅5~10mm,革質で縁は裏面にまくれる傾向があり,裏面に白毛と褐色の長毛が密生する。枝先に散房状の花序をつける。花は径1cmほどあり,5枚の花弁が離生して放射相称に並ぶ。おしべは10本。葯の先に孔が開いて花粉を散らす。開花後,子房はしだいに下向きとなり,果実は下垂し,果柄に近い方から裂開して種子を散らす。本州北部,北海道に分布する。アイヌが葉を茶として利用していた。

 基本変種L.palustre L.(英名wild rosemary,crystal tea)は周極地方に広く分布し,葉の裏面に赤褐色の毛が密生する。これもエスキモーなど北方系民族が,葉を茶としていた。

 イソツツジ属Ledumのいくつかの種は,花を観賞するために栽植される。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「イソツツジ」の意味・わかりやすい解説

イソツツジ
いそつつじ
[学] Ledum palustre L. subsp. diversipilosum Nakai

ツツジ科(APG分類:ツツジ科)の常緑低木。高さ約1メートルになり、よく分枝し、若枝には赤褐色の長軟毛を密生する。葉は互生して枝先に集まり、披針(ひしん)形、長さ2.5~6センチメートルで革質、先は鈍くとがり、全縁で縁(へり)が裏に巻き込む。裏面は白色の短毛と赤褐色の長軟毛を密布している。6~7月、白色で径8~10ミリメートルの花が短い総状花序になって、多数集まって開く。花冠は楕円(だえん)形の5片に分かれ、雄しべは10本、子房に白い短毛がある。果実は楕円形、長さ約5ミリメートルの蒴果(さくか)で下を向き、熟すと基部から5裂開する。本州の福島県以北の高山、北海道の湿原湿地に生え、樺太(からふと)(サハリン)、南千島、朝鮮、東シベリアに分布する。鉢植えにして観賞する。ヒメイソツツジは葉が広線形、長さ1~2.5センチメートルで小さく、北海道以北に広く分布する。イソツツジの名は、エゾツツジが誤まって伝えられたといわれている。

小林義雄 2021年4月16日]


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