アセチリド(読み)あせちりど(英語表記)acetylide

日本大百科全書(ニッポニカ) 「アセチリド」の意味・わかりやすい解説

アセチリド
あせちりど
acetylide

金属炭化物のうち、三重結合アセチレン結合)をもっている塩類似化合物総称アセチレン化物ということもある。アルカリ金属アルカリ土類金属、銅(Ⅰ)、銀、金(Ⅰ)などの化合物が代表的なものである。たとえば、金属ナトリウムをアセチレン気流中で熱したり、銀塩水溶液にアセチレンを通じたり、石灰炭素を強熱するなどして、それぞれ炭化ナトリウムNa2C2炭化銀アセチレン化銀)Ag2C2炭化カルシウムCaC2などが得られる。炭化銅(Ⅰ)Cu2C2は赤色粉末、炭化銅(Ⅱ)CuC2は黒褐色粉末、炭化金(Ⅰ)Au2C2は黄色粉末、それ以外は無色固体である。水では多く加水分解してアセチレンを発生する。ナトリウム、銅(Ⅰ)の化合物は有機合成化学で重要である。

[中原勝儼]

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改訂新版 世界大百科事典 「アセチリド」の意味・わかりやすい解説

アセチリド
acetylide

アセチレンHC≡CHの水素原子が金属で置換された炭化物の総称。M2C2形(Mはアルカリ金属,銅(Ⅰ),銀,金(Ⅰ)など),M2C2形(Mはアルカリ土類金属,亜鉛,希土類元素,ウラントリウムなど),M2C6形(Mはアルミニウムなど),MHC2,MRC2形(Mはアルカリ金属,銅(Ⅰ),銀,金(Ⅰ)など,Rはアルキル基)などの化合物が知られている。加熱した金属にアセチレンを通じたり(アルカリ金属,マグネシウムなど),塩のアンモニア水溶液にアセチレンを吹き込む(Ⅰ族元素)と生成する。またⅠ族以外の金属酸化物を過剰の炭素と加熱しても生成する。カーバイド(炭化カルシウム)CaC2は代表的なアセチリドである(カーバイドcarbideは,正しくはアセチリドを含む炭化物の総称)。無色の化合物が多いが,銅(Ⅰ)(赤褐色),希土類元素(イットリウム,ランタン,ニオブなど。黄色),トリウム(黄色),ウラン(黒色)化合物など着色したものもある。二炭化ウランや炭化トリウムは水と反応してアセチレンのほか,メタン,エチレン,水素などを発生する。銅(Ⅰ),銀,金(Ⅰ)の化合物は著しく爆発性である。ⅠA,ⅡA,ⅠB族元素のアセチリドはC≡C2⁻を含み,代表的なCaC2ではC≡Cの結合間隔1.19Åで,アセチレンの塩と考えることができる。
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化学辞典 第2版 「アセチリド」の解説

アセチリド
アセチリド
acetylide

金属の炭化物のうち,アセチレンHC≡CHの水素原子2個(または1個)を金属原子で置換したとみられる化合物(MC≡CH,MC≡CM)の総称.銅アセチリド(炭化銅)Cu2C2,銀アセチリドAg2C2,金アセチリドAu2C2,水銀アセチリドHg2C2など重金属のアセチリドはいずれも爆発性がある.アルカリ金属,アルカリ土類金属のアセチリド,たとえば炭化ナトリウム,炭化カルシウム(カーバイド)は安定である.銀アセチリドはアンモニアアルカリ性硝酸銀水溶液にアセチレンを通じると,白色,チーズ状の沈殿として得られる.銀アセチリドの爆発性はとくにはげしい.[別用語参照]レッペ反応

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アセチリド」の意味・わかりやすい解説

アセチリド
acetylide

アセチレン結合の炭素原子にアルカリ金属または重金属を結合した形の塩類似化合物の総称。赤褐色の銅アセチリドのほかは無色の固体。1価の金属からは R-C≡C-Na または Na-C≡C-Na のようなアセチリド,2価の金属からは (-C≡C-)Ca のようなアセチリドが生成される。水または希酸と反応しアセチレンまたはその誘導体 R-C≡C-H を生成する。カルシウムアセチリドはカルシウムカーバイドまたは炭化カルシウムともいわれ,アセチレン製造の原料である。重金属たとえば銀や銅のアセチリドはレッペ反応でブチンジオールをつくるときの触媒として使用される。これらはまたアセチレン化合物の検出,定量,精製に利用される。しかし,これら重金属化合物は著しい爆発性を示すので注意が必要である。

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