黄色肉芽腫(読み)おうしょくにくがしゅ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「黄色肉芽腫」の意味・わかりやすい解説

黄色肉芽腫
おうしょくにくがしゅ

正脂血症による黄色腫に属し、組織球(組織定着性のマクロファージ)の原因不明の肉芽腫性増殖主体とし、組織球(増殖)症Xや播種(はしゅ)性黄色腫などと一連の疾患と考えられている。また、代謝障害性全身異常や脂質異常症を伴うことはなく、いわゆる黄色腫とは異なる。幼児期ときに出生時より頭部、顔面、頸部(けいぶ)に単発ないし数個、径2~3ミリメートルから約1.5センチメートル大までの黄色調を呈する表面平滑な半球状に隆起した軟らかい丘疹(きゅうしん)ないし結節を生じ、5~6歳までに自然に消褪(しょうたい)するが、皮疹(ひしん)部に「ちりめんじわ」様の皮膚の「たるみ」や萎縮(いしゅく)を残すこともある。通常、皮膚以外の全身性病変を伴うことはないが、ときに目、肺、精巣の病変を伴ったり肝機能の異常をみることもある。レックリングハウゼンRecklinghausen母斑(ぼはん)(ミルクコーヒー斑)を合併することが少なくないので、いちおうその他のレックリングハウゼン病変の有無を調べる必要がある。組織像については、病変の時期によって若干の相違がある。すなわち、初期には表皮直下から真皮深層にかけての組織球の増殖が主体で、古くなるにつれて脂肪滴を含む泡沫(ほうまつ)細胞が主となり、消褪期には線維成分を中心とするようになる。泡沫細胞とともにトウトンtouton型あるいは異物型巨細胞も散見される。電子顕微鏡的には、これらの組織球では組織球症Xに認められるランゲルハンスLangerhans顆粒(かりゅう)は認められない。診断にはヘマトキシリン・エオジン(HE)染色や脂肪染色による病理組織検査のほか、正脂血症を証明することが必要である。治療および経過については、自然に消褪することを患者の母親によく説明し、経過を観察しながら自然退縮をまつ。

[窪田泰夫]

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