黄真伊(読み)こうしんい(英語表記)Hwang Chin-i

改訂新版 世界大百科事典 「黄真伊」の意味・わかりやすい解説

黄真伊 (こうしんい)
Hwang Chin-i

朝鮮,李朝中宗期(1506-44)の名妓,女流詩人。別名は真娘,妓名明月。進士の庶子として開城に生まれた。美貌に加えて詩書音律すべてに秀で,名勝の朴淵の滝,碩儒徐敬得(真伊の師でもあった)とともに松都(開城)三絶と賞された。才色兼備の彼女は高僧の知足禅師や謹厳貴公子の碧渓守ら多くの名士を恋のとりこにしたという。彼女の作った時調は,儒教道徳に縛られた男性の作とは異なり,愛情生活を奔放にうたい上げており,時調史上,独特な位置を占めている。そうした点が現代人の関心をそそり,鄭漢淑,崔仁浩ら現代作家によって小説の素材にもされている。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「黄真伊」の意味・わかりやすい解説

黄真伊
こうしんい
Hwang Chini

朝鮮,李朝中宗代 (1506~44) の開城 (黄海南道南東部の都市) の名妓。一名,真娘。妓名は明月。美貌で,詩,書,音律に秀で,当時の名士たちと親交があった。師でもあった碩儒の徐敬徳,名勝,朴淵の滝とともに松都 (開城) の三絶とうたわれた。漢詩,および特に愛情を主題とした時調 (シジョ) に幾多の秀作を残したが,儒教道徳に縛られた男性の作品とは異なり,愛情生活を奔放にうたい上げて時調史上に特異な位置を占めている。

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