日本大百科全書(ニッポニカ) 「高取(町)」の意味・わかりやすい解説
高取(町)
たかとり
奈良県中央部、高市(たかいち)郡にある町。1891年(明治24)町制施行。1954年(昭和29)船倉(ふなくら)、越智岡(おちおか)の2村と合併。奈良盆地最南端に位置し、竜門(りゅうもん)山地および曽我(そが)川流域を占める。南東の高取山(584メートル)には南北朝期に越智氏が築城した高取城跡(国指定史跡)があり、近世は植村氏高取藩2万5000石の居城であった。中心の土佐は当時の城下町で、武家屋敷が残っている。また近世末から大和(やまと)売薬製造の中心地で、医薬品製造販売業者12、配置売薬業者約100を数える(2006)。高取山の西山腹には『壺坂霊験(つぼさかれいげん)記』で有名な西国(さいごく)三十三所第6番札所の壺阪寺(南法華寺(みなみほっけじ))がある。眼病に霊験があると伝えられる千手観音(せんじゅかんのん)を祀(まつ)り、養護盲老人ホーム慈母園や匂(にお)いの花園がある。インド政府要人から贈られた天竺(てんじく)渡来大観音石像がある。農業は稲作を中心にイチゴ、ナス、ホウレンソウの栽培が盛ん。製薬業のほかに、印刷、繊維、木材加工などが行われている。近畿日本鉄道吉野線と、芦原(あわら)トンネルを経て吉野川渓谷へ通ずる国道169号が走る。市尾墓山(いちおはかやま)古墳、宮塚(みやづか)古墳は国の史跡に指定されている。面積25.79平方キロメートル、人口6729(2020)。
[菊地一郎]
『『高取町史』全2冊(1964・高取町)』