非神話化(読み)ヒシンワカ(英語表記)Demythologization 英語

デジタル大辞泉 「非神話化」の意味・読み・例文・類語

ひ‐しんわか〔‐シンワクワ〕【非神話化】

新約聖書時代的に制約された表現形式世界像から解放し、その本質的内容を近代的実存立場理解・説明しようとする聖書解釈法ドイツブルトマンが唱えた。

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精選版 日本国語大辞典 「非神話化」の意味・読み・例文・類語

ひ‐しんわか ‥シンワクヮ【非神話化】

〘名〙 ドイツの神学者ブルトマンによって提唱された新約聖書的使信解釈学的方法をいう。時代に制約された神話的表象の形式から、新約聖書の使信を解放し、それによって、使信の本質的・実存的内容を近代的人間観点から理解し、かつ証明しようとする試み。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「非神話化」の意味・わかりやすい解説

非神話化
ひしんわか
Demythologization 英語
Entmythologisierung ドイツ語

ドイツの新約神学者ルドルフ・ブルトマンが、『新約聖書』の神話的世界像を人間学的、実存論的に解釈しようとした試み。ブルトマンが1941年に発表した『新約聖書と神話論』という論文で初めて提起した問題だが、戦後ドイツのみならず全世界の神学者たちの間で討論された。ブルトマンによれば、『新約聖書』の世界は神話的世界像であって、世界は天界、大地下界の三階層からなっている。天界には神と天使、大地には人間、下界にはサタン悪鬼が住んでいる。『新約聖書』が述べ伝えている救済のできごとは、このような神話的世界像によって叙述されているが、この世界像を信ずることとキリスト信仰することは別のことである。神話的世界像は前科学的世界像であるゆえに現代人には受け入れがたい。むしろそれを非神話化して、人間学的ないし実存論的に再解釈することによって、聖書本来の語りかけに信従すべきである、というのがブルトマンの主張であった。しかし非神話化は結局は合理化、いや不徹底な合理化でしかないとヤスパースも加わる大論争となった。

[古屋安雄]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「非神話化」の意味・わかりやすい解説

非神話化
ひしんわか
demythologization; Entmythologisierung

R.ブルトマンによって提唱された新約聖書解釈の一方法。彼によれば,新約聖書は史的事実の記述ではなく,成立当時の教団の信仰を当時の宗教的観念によって告白したのであるから,それを近代人に盲信させることは,知性の犠牲を強いるものである。そこで新約聖書の中心的ケリュグマ (キリストにおける神の救いの行為の内容) を知るためには,それら宗教的諸表象 (彼はこれを「神話」と呼ぶ) に内在する核心を悟るために実存論的解釈を加え,この解釈を通してケリュグマの非神話化が必要であると唱えた。このような解釈 (→様式史的研究 ) とハイデガーの実存主義的存在論の結びつきから必然的に出てきたものであるが,客観的歴史の無視,人間イエスの不在などさまざまな点から論争が行われた。

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百科事典マイペディア 「非神話化」の意味・わかりやすい解説

非神話化【ひしんわか】

聖書学用語で,ドイツ語Entmythologisierungの訳。新約聖書の記事は,その世界像も出来事の叙述も,記された時代の神話の形式を伴っていると考え,聖書が真に伝えようとしている真理を時代に制約された神話的表象の形式から解放することによって,現代人の立場で正しく理解し説明しようとする試み。ブルトマンによって始められた。

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世界大百科事典(旧版)内の非神話化の言及

【ブルトマン】より

…ブルトマンはこの解釈法を発展させ,《ヨハネ福音書註解》(1941),《新約聖書神学》(1948‐53)で新約聖書全体の解釈に適用した。解釈の方法論をまとめたものがいわゆる〈非神話化〉で,これによると,新約聖書の世界観は神話論的であり,そのまま現代に通用するものではない。神話論的表現は削除せず解釈しなくてはならない。…

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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」