非常用炉心冷却系(読み)ひじょうようろしんれいきゃくけい(英語表記)emergency core cooling system

改訂新版 世界大百科事典 「非常用炉心冷却系」の意味・わかりやすい解説

非常用炉心冷却系 (ひじょうようろしんれいきゃくけい)
emergency core cooling system

原子炉の工学的安全施設の一つであって,冷却材喪失事故時などに原子炉内に冷却材を注入することにより,燃料の大規模破損を防止し燃料を引き続き冷却し続けうる形状に保つことを目的として設置されるシステム。略してECCSと呼ぶ。軽水炉用のECCSの有効性を試験した模擬試験の結果をめぐって1970年代前半にアメリカでこの設計の妥当性に関する論争が行われたが,その後アメリカのLoFT(Loss of Flow Testの略)計画をはじめとする多数の炉内・炉外実験,およびこれらの結果を解析する熱流力計算プログラムの開発と検証により,実際の原子炉におけるECCS作動時の炉心挙動についての知見格段に増大し,その有効性についての確信は深まりつつある。この設備は,冷却材喪失の規模によって対応する設備を変え,かつある規模の喪失に対して必ず二つ以上の設備が対応するように構成されている。
原子炉
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世界大百科事典(旧版)内の非常用炉心冷却系の言及

【原子力発電論争】より

…AECは63年末から,原子炉動特性の研究,一次系の安全性研究,事故解析,核分裂生成物の挙動の研究,安全性テスト実験計画の5項目からなる安全性研究を計画していた。この最後の項目に関係するのが冷却材喪失事故の実験でLOFT(ロフト)(Loss of Fluid Test)計画と呼ばれ,非常用炉心冷却系(ECCS)の作動実験を含んでいた。これらの実施はおくれ,71年にECCSの模擬テストが行われたが,その結果,注入した水がうまく炉心を冷却しないということが判明した。…

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