青海(省)(読み)せいかい

日本大百科全書(ニッポニカ) 「青海(省)」の意味・わかりやすい解説

青海(省)
せいかい / チンハイ

中国、西北地区南部の省。略称は青。面積72万1200平方キロメートル、人口480万4160(2000)。省政府所在地は北東部の西寧(せいねい)市。周囲を祁連(きれん)、崑崙(こんろん)、タングラ、西傾(せいけい)山などの山脈に囲まれ、全域が青蔵高原の北東部分をなす。標高2500~4000メートル。中央部をブルハンブダイ、積石(せきしゃく)、バインハルの山脈が東西に走り、南北を分ける。北部は祁連の山地で、東西に走る数列の平行山脈からなり、南北幅最大300キロメートル、南東には中国最大の塩水湖、青海湖がある。西寧付近は黄河支流湟水(こうすい)の河谷平野で、黄土高原の南西縁にあたり比較的雨量も多い。北西部はチャイダム盆地で面積約22万平方キロメートル、40余の内陸河川がある。盆地西部はゴビ(礫質(れきしつ)砂漠)、風食地、東部はステップや沼沢、塩湖が多く、その間に小規模な砂漠が広がる。1月の平均気温は零下10℃より低いが、夏季は30℃を超え、雨量も少ないため、北西乾燥区への過渡的タイプを示す。省南部は青海高原で標高平均4000メートル、アムネマチンやグラタンドンなど高峰も多い。北部は黄河の源流地域で、ギャリンノールオリンノールなど湖沼が分布し、南部は揚子江(ようすこう)やメコン川の源流地域である。気候は寒冷で、西方の山地では氷河や高冷地砂漠が発達する。

 農業は、全域では青稞(チンコー)(ハダカエンバク)栽培が主であるが、湟水河谷では小麦、アワなどの栽培が盛んである。チャイダム盆地のシャンリデや都蘭(とらん)などでは解放軍によって開墾された耕地が広がり、灌漑(かんがい)農業が発達している。青海省はまた中国有数の牧畜地域である。全省で利用可能な牧草地は約3320万ヘクタール、チャイダム盆地の海西、南部の玉樹、ゴログではヒツジやヤクの飼育が行われている。青海省全体での工業的基礎は弱いが、西寧には毛織物、農業機械などの近代工場がある。チャイダム盆地の油沙山(ゆささん)、マンナイ、冷湖などは石油の産地で、チャルハン塩湖やツァカ塩湖では塩やカリ塩が採取される。

 青海省には2000年以前よりチベット系の羌(きょう)が居住、王莽(おうもう)の時代には西海郡が設けられた。のち、吐谷渾(とよくこん)や吐蕃(とばん)が勢力をもったが、宋(そう)代には西寧付近に州が置かれた。清(しん)代には北部はモンゴル29族、南部は土司(どし)49族が置かれ、1928年青海省となった。

 省内には西寧、ゴルムド、ドーリンハーの3市のほか民族自治州が六つあり、チベット族、モンゴル族、サラール族など少数民族も多い。また、西寧を起点に青蔵、青新両自動車道や蘭青(らんせい)鉄道が通り、近年、青蔵鉄道もゴルムドまで敷設されている。

[駒井正一]

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