離魂記(読み)りこんき

日本大百科全書(ニッポニカ) 「離魂記」の意味・わかりやすい解説

離魂記
りこんき

中国、中唐の小説。陳玄祐(ちんげんゆう)(生没年、経歴不明)の作。衡州(こうしゅう)(湖南省)の長官張鎰(ちょういつ)は甥(おい)の少年王宙を愛し、娘倩娘(せんじょう)との結婚を約束する。成長した二人の間には愛の気持ちが芽生えていた。ところが、幕僚に嫁がせられることになった倩娘は宙を慕うあまり、魂が身体から離れ、上京する宙に途中で追い付き、成都四川(しせん)省)で5年を過ごし、二児をもうけて宙とともに衡州に帰ってくる。そして病んで脱け殻のようになった自分のもとの身体と一体になるという筋。元の鄭光祖(ていこうそ)の戯曲『倩女離魂(せんじょりこん)』はこれに基づいている。

[内山知也]

『前野直彬訳『唐代伝奇集1』(平凡社・東洋文庫)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「離魂記」の意味・わかりやすい解説

離魂記
りこんき
Li-hun-ji

中国,中唐の伝奇小説。陳玄祐の作とされるが,主人公の一人が玄祐と自称するのに拠るだけのことである。1巻。地方官の娘,倩娘 (せんじょう) が,病気寝たきりの姿を父母のもとに残したまま,もう一つの姿で恋人を追い,5年間の生活をともに過した物語。『太平広記』に収められる。

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