郡中惣代(読み)ぐんちゅうそうだい

精選版 日本国語大辞典 「郡中惣代」の意味・読み・例文・類語

ぐんちゅう‐そうだい【郡中惣代】

〘名〙 江戸幕府代官、郡代支配の村々から選出された二~三人の村方惣代郡中入用の割賦、取立に立会い、その支出監査に当たった。

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改訂新版 世界大百科事典 「郡中惣代」の意味・わかりやすい解説

郡中惣代 (ぐんちゅうそうだい)

江戸時代の各地に散在する幕領天領)に,宝暦・天明期(18世紀後半)以降存在した村役人の代表。個々の代官所支配管下全体(=郡中)の庄屋名主)を代表する〈惣代〉の意味で,郡中惣代庄屋(名主)と呼ばれる。形式的には代官による任命のかたちをとるが,実質的には村役人の中での入札で選出,推薦される。原則として任期は1年間で世襲制をとらない。分散・錯綜する所領形態をとり,かつ現地の支配機関としては脆弱な代官所しかもたない幕領において,代官所と各村々とを仲介し,現地支配を実質的に補完する重要な諸機能を果たした。各地の幕領により,人数(1,2~十数名),名称,機能,性格に若干の違いがある。郡中惣代は1713年(正徳3)幕領に対して出されたいわゆる〈大庄屋廃止令〉以後,大庄屋の代りに置かれたものとされたり,藩領の大庄屋,大肝煎などと同質視されたりするが,別系統のものである。大庄屋が武士的身分を有し,支配機関としての性格が強いのに対し,郡中惣代は身分上,経済上の特権がない場合が多く,郡中各村の庄屋(名主)との間の書簡往復,寄合(〈郡中寄合〉)開催などの恒常的な連絡ルートによって全庄屋(名主)の総意を代表しうるなど,郡中村役人の代表=〈惣代〉としての性格を強くもつことが重要である。機能は(1)現地の代官陣屋行財政の実質的な肩代り(廻状作成,触回しなど上意下達の仲介,御用状差立て,御用人足差配など(=〈御用勤〉)),(2)毎年の年貢米(金)江戸(大坂)輸送の統轄,年貢諸役軽減などの諸嘆願闘争の組織化,代官所役人の応接,郡中内の各庄屋への諸連絡など(=〈郡中用〉)を行うと同時に,そのための必要経費や(1)のための諸経費がくみこまれた〈郡中入用〉の監査を行うことである。このように,村役人の惣代として〈御用〉〈郡中用〉の両方を担うところに最大の特徴があったが,1872年(明治5)ころまでに廃された。
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