輔(補)佐人(読み)ほさにん

改訂新版 世界大百科事典 「輔(補)佐人」の意味・わかりやすい解説

輔(補)佐人 (ほさにん)

民事訴訟法と,刑事訴訟法とでは意味が異なる。

(1)民事訴訟においては,当事者またはその訴訟代理人とともに期日に出頭し,それらの者の陳述を補助する者をいう(民事訴訟法60条)。旧民事訴訟法(88条)では〈輔佐人〉と表記した。いずれの裁判所の手続においても認められ,弁護士である必要もないが,その裁判所の許可を得ることが必要である。この制度は,高度の専門的・技術的知識が必要となる訴訟(たとえば,特許権侵害に基づく損害賠償請求訴訟など)において,当事者が適切な主張を展開しようとする場合などに有効である。ただ,期日における陳述の補助者としての地位しか有しないので,期日に単独で出頭したり,期日外で訴訟行為をすることはできない。補佐人の陳述は,当事者または代理人がただちに取り消しまたは訂正しない限り,当事者または代理人の陳述とみなされる。

(2)刑事訴訟においては,被告人の補助者としての地位に立つ者である(刑事訴訟法42条)。被告人の法定代理人保佐人,配偶者,直系の親族および兄弟姉妹は,いつでも書面で届け出ることにより補佐人となることができる。被疑者については補佐人は認められない。補佐人は,一定の身分関係上の情誼に基づき被告人を援助する者であり,この点で同じく被告人の補助者である弁護人と異なる。補佐人は,被告人の明示した意思に反しない限り,被告人のなしうるすべての訴訟行為をすることができる。
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