軟成分(読み)なんせいぶん(英語表記)soft component

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「軟成分」の意味・わかりやすい解説

軟成分
なんせいぶん
soft component

大気中の宇宙線で,厚さ 10cm 程度の鉛で吸収される成分。硬成分の対比語。主体は電子,陽電子であるが,低エネルギーの μ 粒子陽子,π 中間子も含まれる。また,電子,陽電子,光子のいわゆる電子成分と同じ意味に使われることもある。高度ゼロで,軟成分は宇宙線全強度の 1/3 で,1cm2の水平な面積毎秒約 0.005個の割合で入射する。高度とともに宇宙線中の軟成分の割合が増し,約 5kmの高度で硬成分と同程度,それより高空では軟成分がはるかに多くなり,15kmないし 20kmの高度で極大を示す。軟成分の電子や陽電子は地上近くでは μ 粒子の崩壊により生じ,また上空では一次宇宙線と空気を構成する元素原子核との衝突でつくられた中性 π 中間子の崩壊でできるカスケードシャワーにより生じる。

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世界大百科事典(旧版)内の軟成分の言及

【宇宙線】より

…また,γ線は宇宙線源の近傍で強く放出されるはずなので,γ線点源の探索もなされている。
[軟成分と硬成分]
 一次宇宙線が大気中に突入すると,陽子は約80g/cm2(ここでg/cm2は物質の厚さ(この場合は大気)を示す単位で,密度ρg/cm3の物質lcmの層をρlg/cm2と表す),ヘリウムは約45g/cm2,鉄は約14g/cm2の平均自由行路で空気を構成している原子核と衝突し,シャワーshowerと呼ばれる二次粒子発生現象でエネルギーを失う。このため一次宇宙線は大気の深さとともに指数関数的に強度を減じ,地上に到達するものはほとんどなく,したがって地上の宇宙線は二次宇宙線である。…

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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」