跳返(読み)はねかえる

精選版 日本国語大辞典 「跳返」の意味・読み・例文・類語

はね‐かえ・る ‥かへる【跳返】

〘自ラ五(四)〙
① からだを回転させてもと姿勢にもどる。
太平記(14C後)一六「其子、獅子の機分あれば、教へざるに中より(ハネ)返りて、死する事を得ずといへり」
勢いよくとびはねる。はね上がる。跳躍する。
※太平記(14C後)三七「左へ回右へ曲り抛(ハネ)返ては上りたる在様」
③ 物にあたって、はねてもどってくる。はじかれてかえってくる。反撥する。
※思出の記(1900‐01)〈徳富蘆花〉九「砲丸もはねかへる程堅固の応対
④ ある事を行なった影響がもとへもどってくる。
太平策(1719‐22)「手にとらへて作り直さんとするは、つよく抑(をさゆ)るほど、先にてはねかへることを知らず」
自然主義における「家」(1948)〈瀬沼茂樹〉四「泡鳴自身の身に激しい傷手(いたで)となってはねかえってくるのである」
⑤ 一時下落した相場が再び騰貴する。

はね‐かえ・す ‥かへす【跳返】

〘他サ五(四)〙
① はねてひっくりかえす。押えられていたのをもとへもどす。
源平盛衰記(14C前)三七「駻返(ハネカヘサン)々々としけれ共、三位力増也ければ、抑て更に働さす」
※苦の世界(1918‐21)〈宇野浩二〉五「明後日あたりこの相場がきっと跳ねかへすので」
② ぶつかって来るものをもとの所へはじき返す。反射させる。反撃する。
星座(1922)〈有島武郎〉「何かを反省しようとすると、弾ね返すやうに断定的な答へを投げつけてよこした」
③ 水・泥の表面をたたいて水・泥が勢いよくとび散るようにする。
潮騒(1954)〈三島由紀夫〉二「四枚の鯒(こち)と三枚の舌平目が水を跳(ハ)ねかへして上って来た」
忠告や申し出などを、がんとして受けつけない。相手につき返す。はねつける。
※二人女房(1891‐92)〈尾崎紅葉〉上「『否(いや)な』と苦々しく刎(ハ)ね返せば」

はね‐かえり ‥かへり【跳返】

〘名〙
① はねてもとへもどってくること。また、そのもの。反動
マヤと一緒に(1962)〈島尾敏雄〉「雨滴のはねかえりが頭や胃の中でもあばたを作り」
② あることを行なったことの悪い影響。「増税景気へのはねかえり」
③ かるはずみな言動をすること。軽率であること。はねあがり。
社会百面相(1902)〈内田魯庵〉代議士「跳返(ハネカヘ)りの彌次馬が面白半分に飛出し」
④ おてんば。おきゃんな娘。はねあがり。
※雑俳・塵手水(1822)「隠されぬ医者が星さす刎かへり」

はねっ‐かえ・る ‥かへる【跳返】

〘自ラ五(四)〙 「はねかえる(跳返)」の変化した語。
※社会百面相(1902)〈内田魯庵〉天下太平なる哉「大風呂敷を広げる術さへ上手になって跳返(ハネッカヘ)れば先づ政治家は天下太平」

はねっ‐かえり ‥かへり【跳返】

〘名〙 「はねかえり(跳返)」の変化した語。
※当世書生気質(1885‐86)〈坪内逍遙〉三「はねっかへりを活溌だと思ったり」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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