語う(読み)かたらう

精選版 日本国語大辞典 「語う」の意味・読み・例文・類語

かたら‐・う ‥ふ【語う】

[1] 〘連語〙 (動詞「かたる(語)」の未然形に、反復・継続を表わす助動詞「ふ」の付いたもの) 語りつづける。繰り返し話をする。
万葉(8C後)五・七九四「鳰鳥(にほどり)の 二人並び居 加多良比(カタラヒ)し 心そむきて 家離(ざか)りいます」
[2] 〘他ワ五(ハ四)〙 ((一)の「ふ」が接尾語化したもの)
① 心に思っていることを、口に出して相手に伝える。語る。また、相談する。
※東大寺諷誦文平安初期点(830頃)「余人は聞き知ら不。唯し仏のみ聞き知りたまひて、倶に談(カタラヒ)給ひ」
② 親しく交際する。
※伊勢物語(10C前)一六「思ひわびて、ねむごろに相かたらひける友だちのもとに」
③ 夫婦の約束をする。また婉曲に、情交することをいう。ちぎる。
大和(947‐957頃)三九「そこなりけるうなゐを、右京の大夫よびいでてかたらひて、あしたによみておこせたりける」
④ 他人を説得して仲間に引き入れる。味方にする。
源氏(1001‐14頃)夕顔「今一度はえあるまじき事にやと、小君をかたらひ給へど」
平家(13C前)七「興福園城両寺は鬱憤をふくめる折節なれば、かたらふ共よもなびかじ」
⑤ (①②から転じて) 話し合う。したしく語り合う。「水入らずでかたらう」
測量船(1930)〈三好達治〉甃のうへ「あはれな花びらながれ をみなごに花びらながれ をみなごしめやかに語らひあゆみ」
[3] 〘自ハ四〙 (鳥を擬人化した表現) 鳴く。
※青表紙一本源氏(1001‐14頃)花散里「ほととぎすかたらふ声はそれなれどあなおぼつかなさみだれの空」
堤中納言(11C中‐13C頃)逢坂越えぬ権中納言「山ほととぎすも里なれてかたらふに」
[語誌](二)の例は上代にはほとんど見えず、平安時代以降多用され、「語る」に比して親密な人間同士でより具体的な内容を話題にした行為を表わす。聞き手の返事を伴わず、会話がなされていない例もあり、現代の相互的な発言行為の「語り合う」と必ずしも重ならない。

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