観世縒(読み)かんじんより

精選版 日本国語大辞典 「観世縒」の意味・読み・例文・類語

かんじん‐より クヮンジン‥【観世縒】

〘名〙 「かんぜより(観世縒)」の変化した語。
怪談牡丹燈籠(1884)〈三遊亭円朝〉一〇「蚊帳に穴が明いて居るものですから、所所観世捻(カンジンヨリ)で括(しば)ってあるので」

かんぜ‐より クヮンゼ‥【観世縒】

〘名〙 細く切った紙をよって紐(ひも)のようにしたもの。こより。かんぜこより。かんじんより。かんじょうより。観世折り。〔随筆・猿楽伝記(1736‐41頃か)〕

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「観世縒」の意味・わかりやすい解説

観世縒
かんぜより

観世小縒(こより)(紙縒(こより))とも。和紙を細長く裂いて縒(よ)ったもの。またその「こより」を縄状に縒り合わせたもの。徳川家康の軍陣で観世大夫(だゆう)がつくりだし、鎧(よろい)の繕いにあてた、『翁(おきな)』の烏帽子(えぼし)の掛緒(かけお)にした、また『道成寺』の鐘の中に面紐(めんひも)がないので応急手段としてつくったなど、『甲子夜話(かっしやわ)』ほかの書の伝える諸説がある。また、仏像奉納者が名前を書いた紙を「こより」とし、仏像の胎内に入れた勧進(かんじん)小縒の訛(なま)りともいう。

増田正造

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