(読み)くつがえる

精選版 日本国語大辞典 「覆」の意味・読み・例文・類語

くつ‐がえ・る ‥がへる【覆】

〘自ラ五(四)〙
上下反対になる。ひっくりかえる。また、ころがる。
書紀(720)大化二年三月(北野本訓)「其の甑、物に触れて覆(クツカヘル)
太平記(14C後)二「澳(をき)の方より俄に悪風吹来て、此船忽に覆(クツカヘ)らんとしける間」
国家権力旧家などが倒れる。
渋江抽斎(1916)〈森鴎外〉三三「将に覆(クツガヘ)らんとする日野屋の世帯を支持して行かうと云ふものが」
既成のものが否定されて根本から変わる。
※一九二八・三・一五(1928)〈小林多喜二〉九「自分達の手で作りあげた取調書が予審でガラリと覆へるやうなことがあると」
④ 補助動詞的に用い、動詞に添えてその動作を強める。
大和(947‐957頃)二二「監の命婦めでくつがへりて、もとめてやりけり」

くつ‐がえ・す ‥がへす【覆】

〘他サ五(四)〙
① 上下を反対にする。ひっくりかえす。うらがえす。転覆させる。
※南海寄帰内法伝平安後期点(1050頃)一「余れる飯ひを即ち瓮(ほとき)の中に覆(クツカヘシ)(うつ)し」
② 国家、権力、旧家などを下から倒す。ほろぼす。
※書紀(720)推古一二年四月(寛文版訓)「国家(あめか下)を覆(クツカヘス)(と)き器を為(つく)る」
③ 既成のものを否定して根本から変える。
※真面目なれ(1908)〈後藤宙外〉自然派の態度を難ず「在来思想根底より覆(クツガ)へして」

お・う おふ【覆】

〘他ハ四〙 =おおう(覆)
古事記(712)下・歌謡百足る 槻がえは 上(ほ)つ枝(え)は あめを淤幣(オヘ)中つ枝は あづまを淤幣(オヘ)り 下(し)づ枝は ひなを淤幣(オヘ)り」
※火の柱(1904)〈木下尚江〉二二「梅子は身を顫(ふる)はして面を掩(オ)へり」

ふく‐・す【覆】

〘他サ変〙
① くつがえす。倒す。ひっくり返す。
② おおう。つつむ。かくす。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「覆」の意味・読み・例文・類語

ふく【覆】[漢字項目]

常用漢字] [音]フク(呉)(漢) フウ(漢) [訓]おおう くつがえす くつがえる
〈フク〉
ひっくり返る。くつがえる。くつがえす。「覆水覆轍ふくてつ覆没覆滅転覆
もとにもどってする。繰り返す。「覆刻・覆製/反覆
おおう。かぶせる。「覆面被覆
〈フウ〉おおう。「覆載被覆

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

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