衛生工学(読み)えいせいこうがく

日本大百科全書(ニッポニカ) 「衛生工学」の意味・わかりやすい解説

衛生工学
えいせいこうがく

公衆の健康の保護と増進を目的にして、工学の諸原理を環境の汚染防止と生活環境の保全に応用する学問分野。人々の生命と健康を脅かす原因が文明や社会の発展に伴って変化するので、目的指向である衛生工学の対象も、都市の上下水道から大気水質浄化、騒音振動制御、産業排出物制御、最終廃棄物管理、放射性排出物管理、建築物の空調暖冷房、工場内作業環境の制御、地域の物質代謝施設計画、大気や水質および土壌環境の計画と管理、立地計画など広範多岐にわたっている。そのために必要な学問分野も、(1)改善または保全の目標を定めるために生理学、公衆衛生学、動植物生態学、流れ学、気象学、統計学など、(2)改善策を講じるために土木工学化学工学、微生物工学、流体工学、熱工学、システム工学など、(3)計画をたてるために計画数学、地域計画学、都市計画学、経済学など多岐にわたっている。第二次世界大戦後、北海道大学と京都大学に衛生工学科、東京大学に都市工学科、大阪大学に環境工学科がそれぞれ工学部内に設けられた。他の大学では工学部の中に関連講座が設けられている。

[小林三樹]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「衛生工学」の意味・わかりやすい解説

衛生工学
えいせいこうがく
sanitary engineering

人間の身体的,精神的に良好な状態を増進させるために,人間の物理的環境を工学的手段によってコントロールする,技術と学問の体系。具体的には,屎尿処理塵芥処理,上下水道,冷暖房換気,有害作業環境除去などに関連する施設,設備器具建設,改善などの工学技術である。衛生工学は,したがって環境衛生の中核的部分を占めるものであり,保健問題を取扱う他の専門分野の人々との協力がきわめて大切である。単なる土木工学,建築工学でなく,具体的な仕事における衛生学的意義が明確に理解された工学の一分野として,衛生工学は人間の生活環境の変遷とともに,今後大いに発展が期待される。

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