精選版 日本国語大辞典 「松前」の意味・読み・例文・類語
まつまえ まつまへ【松前】
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北海道南西部,渡島(おしま)支庁松前郡の町。1940年福山町から改称。人口8748(2010)。松前半島南西部に位置し,南と西は日本海に面する。西方海上の大島(渡島大島),小島(松前小島)を含む。地名はアイヌ語に由来する。〈まつまえ〉の名は,近世には現在の町の中心地である松前氏の城下福山の異称のほかに,〈松前地〉のように蝦夷地に対して和人の居住地としての和人地(シャモ地)の意,および〈松前島〉のように現在の北海道そのものの意にも用いられた。気候は対馬海流の影響を受けて比較的温暖である。町域の大半は山地で,海岸沿いのわずかな平地に集落が帯状に連なる。
福山は国鉄松前線(現,函館バス)の終点で国道228号線が通る。和人の渡来は早くから行われ,1600年(慶長5)松前慶広がこの地に福山館を築いて以来,北海道の政治・文化・経済の中心として繁栄した。明治維新後は漁業の町に変貌した。現在も主産業は漁業で,イカの一本釣りを中心にヤス,ホッケなどの漁獲も多い。福山(松前)城跡(史)には本丸御門(重要文化財)が残り,また桜の名所として知られる。付近に法幢(ほうどう)寺,北海道最古の建築という山門のある法源寺,旧城門を山門とする阿吽(あうん)寺,背後の台地上に安東氏の館のあった大館(おおだて)跡がある。渡島大島は北限のオオミズナギドリ繁殖地(天),また松前小島はケイマフリ,ウミガラスなど海鳥の大繁殖地で,天然保護区域に指定されている。
執筆者:奥平 忠志+榎森 進
愛媛県中央部,伊予郡の町。人口3万0359(2010)。伊予灘に注ぐ重信川の河口南岸に位置し,松山平野の中にあって肥沃な水田地帯である。中心集落の松前には,1595年(文禄4)文禄の役の功により伊予に6万石を与えられた加藤嘉明の松前城があり,1603年(慶長8)松山に城が移されるまで城下町として栄えた。江戸時代は松前浜を中心とする漁村で,陸揚げされた鮮魚は,婦人たちが頭上の桶に入れて松山城下や近郷に行商に出,彼女らは〈松前のおたた〉とよばれた。1732年(享保17)の大飢饉の際,筒井の百姓作兵衛は翌年播種する麦を残すため蓄えの麦種を枕に餓死し,義農とたたえられた。76年(安永5)松山藩主松平定静は義農作兵衛の墓碑を建て,1881年には義農神社としてまつられた。明治から昭和初年にかけては,陶磁器や海産加工品の行商が盛んで,販路は遠く中国大陸方面などにも及んだ。1938年東洋レーヨン愛媛工場が誘致され,繊維の町として発展。北の松山市,南の伊予市に挟まれて都市化が進む。米麦を中心に野菜,果実,花卉の栽培などの近郊農業が行われる。JR予讃線,伊予鉄道郡中線,国道56号線が通じる。
執筆者:上田 雅子
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
北海道の松前地方は昆布の名産地であったので、昆布を用いる料理に松前という文字を使う。松前煮は甘露(かんろ)煮の一種で、白焼きのハゼ、フナ、アユなどを甘露煮にして、これに昆布も煮て加えたもの。松前揚げは材料(エビ、サヨリなど)に小麦粉をまぶし、卵の白身をつけて細かく刻んだ昆布をまぶしてさっと揚げる。松前漬けは細く刻んだするめと昆布を加えてみりんじょうゆ漬けにしたものである。
[多田鉄之助]
…北海道渡島(おしま)半島南西端にある松前町の旧名。室町・戦国期には安東氏の蝦夷島支配の拠点となり,15世紀中葉には下国安東氏が館(大館)を構えていたが,1513年(永正10)アイヌの攻撃にあい落城,翌14年蠣崎(かきざき)氏(のちの松前氏)が大館に移住し,安東氏より蝦夷島支配を公認されて以来,その拠点となった。…
※「松前」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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