荊棘・薔薇(読み)ばら

精選版 日本国語大辞典 「荊棘・薔薇」の意味・読み・例文・類語

ばら【荊棘・薔薇】

〘名〙
① (荊棘) とげのある木の総称いばら
※東大寺本大般涅槃経平安後期点(1050頃)「何故か虚空の中の刺(ハラ)を抜かぬ」
② (薔薇) バラ科バラ属の植物の総称。またはその中のいくつかを交配して作られた西洋バラを指す。いばら。しょうび。そうび。《季・夏》
※俳諧・翁草(1696)「寺にかへればすはる麦食〈芭蕉〉 雨すぎて白く咲たる茨の花〈史邦〉」
[語誌](1)イバラ・ウバラあるいはムバラから変化したものと考えられる。もともとはとげのある草木の総称であったのが、次第に野イバラだけをさすようになった。とげがあるので嫌われていたらしく、歌材としてもほとんど顧みられなかった。
(2)紀貫之が「さうび」の題で「我はけさうひにぞみつる花の色をあだなる物といふべかりけり」〔古今‐物名〕と詠んだのは、中国から渡来したコウシンバラであるといわれる。
(3)江戸時代になると、「花壇地錦抄」に「荊棘のるい」として「はまなす、長春、ろうざ、白長春、猩々長春、牡丹荊、ごや荊」などが列挙され、花木として広く親しまれていた様子がうかがえる。「ろうざ(rosa)」という名から見て、このころすでに西洋バラも流入していたようである。

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