舌痛症(読み)ぜっつうしょう(英語表記)Glossalgia

六訂版 家庭医学大全科 「舌痛症」の解説

舌痛症
ぜっつうしょう
Glossalgia
(口・あごの病気)

どんな病気か

 ヒリヒリする、ピリピリする、ジンジンする、やけどをしたような感じなどと表現されて舌の痛みが訴えられます。しかしながら、痛みが出るような舌の状態は観察されないという病状です。

症状の現れ方

 食事中、口に物が入っている時は痛みがないので、食事には支障ありません。舌が痛いと言いながら食事ができるので、舌の痛さを訴えても、まわりの人には理解されず、舌には痛みの原因となるような状態は見当たらないので、医師にも舌の痛みを理解してもらえません。

 このため医療機関を渡り歩くこと(ドクターショッピング)もしばしばです。誰もこの痛みはわからないと思い込んで年余に及ぶ人も多いのです。

原因は何か

 原因は今までのところ、心身症(しんしんしょう)あるいは心気症(しんきしょう)といわれています。日常生活でストレス問題をかかえている時や、そうした時期に歯科治療を行ったりすると、これを契機に発症することがあります。これは心身症と考えられます。

 また、舌の痛いことにとらわれて、舌をいつも観察しては、片時も舌の痛みから解放されず、がんノイローゼにまでなるような場合は、舌が気になることが病気で、舌そのものが悪いわけではないのです。このような人が心気症とされる人たちです。

検査と診断

 口腔内の検査をして舌に問題を起こすような原因があるかを調べます。舌痛症であれば、口腔内には病気の原因は見当たりません。

 舌の付け根の両側にある米粒大から小さい小豆大のもの(舌扁桃の一部)を腫瘍ができたと考え、これを毎日観察している人がいますが、舌痛症からがんが発生することはありません。

治療の方法

 治療を行うのは歯科のなかでも歯科心療科、心療歯科などを標榜するところで、心身症あるいは心気症として治療を行います。薬物療法心理療法などが行われます。

小野 繁

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「舌痛症」の意味・わかりやすい解説

舌痛症
ぜっつうしょう

他覚症状がなく、組織学的変化も認められないのに舌が痛む状態。国際頭痛分類ICHD(International Classification of Headache Disorders)の診断基準に沿うと、口腔(こうくう)内の粘膜表面に持続的に灼熱(しゃくねつ)感を伴う(ヒリヒリ、カーッとした)痛み、あるいはピリピリ、ジンジンする感覚が、1日に2時間以上かつ3か月以上にわたって繰り返し続くが、外見上も組織に変化を認めず、臨床的に明らかな原因となる疾患も認められない病態である。口腔内灼熱症候群(バーニングマウス症候群)の一つとされており、灼熱感を中心とした痛みはとくに舌灼熱glossopyrosisとよばれることもある。症状は痛みが中心であり、ほかに口腔内乾燥(ドライマウス)による炎症に伴う痛みや、味覚障害を訴える場合もある。舌炎や歯肉炎などの口腔内の明らかな炎症や病変によって生ずる痛みは除外される。

 高い比率で女性に発症し、とくに閉経期以降の更年期の中年女性に多い。原因は不明であるが、ストレスなどの心理社会的要因やホルモン異常のほかに、痛みの知覚変化などが考えられている。しばしば抑うつ状態を伴うこともあり、持続する痛みのために日常生活に支障をきたす場合もある。治療は痛みに対する対症療法が中心となる。

[編集部 2016年5月19日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例