臨済録(読み)りんざいろく

精選版 日本国語大辞典 「臨済録」の意味・読み・例文・類語

りんざいろく【臨済録】

中国、唐代の禅書一巻臨済宗開祖臨済義玄法語弟子の三聖慧然が集録したもの。

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デジタル大辞泉 「臨済録」の意味・読み・例文・類語

りんざいろく【臨済録】

中国、唐代の法語集。1巻。臨済義玄の法語を慧然えねん編集。1120年、宗覚重刊。臨済宗で最も重要な語録。鎮州臨済慧照禅師語録。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「臨済録」の意味・わかりやすい解説

臨済録
りんざいろく

中国の仏書。臨済宗の開祖、臨済義玄(ぎげん)の語録で、詳しくは『鎮州臨済慧照(えしょう)禅師語録』という。全一巻。その弟子三聖慧然(さんしょうえねん)の編集、興化存奨(こうけぞんしょう)の校勘である。巻首に北宋(ほくそう)末期、鎮州の長官であった馬防(ばぼう)の序があり、上堂、示衆、勘弁、行録(あんろく)の四部よりなっている。行録の最後に伝記があり、形式、内容ともに、禅の語録の典型とされる。「随処に主と作(な)れば、立処皆な真なり」「三乗十二分教は、不浄を拭(ぬぐ)う故紙なり」「仏を殺し祖を殺して、始めて解脱(げだつ)を得ん」など、名句が多い。また、無多子(たしなし)(単純)、活地(かっぱっぱっち)(ぴちぴちしているさま)、可可地(ある程度)など、唐代の口語もみられ、その資料としても注目される。宣和2年(1120)の版本のほか、これに先だつ四家録のテキストがあり、英仏二国語にも翻訳されている。

柳田聖山

『朝比奈宗源訳注『臨済録』(岩波文庫)』『柳田聖山編『禅語録』(『世界の名著18』所収・1974・中央公論社)』

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改訂新版 世界大百科事典 「臨済録」の意味・わかりやすい解説

臨済録 (りんざいろく)
Lín jì lù

中国の臨済禅の開祖,臨済義玄(?-866)の語録。詳しくは《鎮州臨済恵照禅師語録》。その弟子三聖恵然の編と伝える。1巻。臨済は,義玄が住する禅院の名で,帰依者であった鎮州王氏の開創であり,《臨済録》は鎮州臨済院における義玄の上堂説法を中心に,その一代の行録,問答を集めた言行録である。現在の本は,宋代の再編で,臨済禅の聖典として,その家風を強調する傾きをもつが,唐代の古い記録をうけることは確かで,言語,歴史,思想資料としても,高く評価される。義玄の説法は,あたかも武宗の廃仏の直後に当たっていて,仏教の伝統を見直そうという根元的革新的な特色をもつ。古典や既成教学の権威によらず,現在の個々の人間主体を無条件に肯定し,その完全な発揮を求める新しい価値を主張する。〈赤肉団上に一無位の真人あり〉〈随所に主となれば立所みな真なり〉〈いっさいの人惑をうけてはならぬ〉〈仏を殺し祖を殺して,はじめて解脱を得る〉など,近代的な名句が多い。ドミエビルの仏訳と,ルース・ササキの英訳がある。
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百科事典マイペディア 「臨済録」の意味・わかりやすい解説

臨済録【りんざいろく】

中国,唐代の仏書。臨済宗の開祖臨済の法語を集録したもの。詳しくは〈鎮州臨済恵照禅師語録〉。2巻。編纂(へんさん)は義玄の弟子恵然(えねん)。臨済宗の根本聖典。
→関連項目無門関

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「臨済録」の意味・わかりやすい解説

臨済録
りんざいろく
Lin-ji-lu

中国,唐の僧臨済の言行録。2巻。臨済の弟子慧然が編集したもので,正式の名は『鎮州臨済慧照禅師語録』。問いに対する師の答えが独特なことで有名である。

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世界大百科事典(旧版)内の臨済録の言及

【禅宗】より

… 日本の臨済宗は,鎌倉時代の初めに明庵栄西が入宋して,五家七宗のうちの黄竜宗を伝え,《興禅護国論》を著して,旧仏教との調和をはかりつつ,鎌倉幕府の帰依で京都に建仁寺を開くのに始まり,同じく鎌倉幕府が招いた蘭渓道隆や無学祖元などの来朝僧と,藤原氏の帰依で京都に東福寺をひらく弁円や,これにつぐ南浦紹明(なんぽしようみよう)(1235‐1308)などの入宋僧の活動によって,短期間に鎌倉と京都に定着し,やがて室町より江戸時代にその後継者が,各地大名の帰依で全国に広がるものの,先にいう四十八伝二十四流の大半が,栄西と道元その他の少数を除いてすべて臨済宗楊岐派に属する。臨済禅は,唐末の禅僧,臨済義玄(?‐866)を宗祖とし,その言行を集める《臨済録》をよりどころとするが,日本臨済禅はむしろ宋代の楊岐派による再編のあとをうけ,とくに公案とよばれる禅問答の参究を修行方法とするので,おのずから中国の文学や風俗習慣に親しむ傾向にあり,これが日本独自の禅文化を生むことになり,五山文学とよばれるはばひろい中国学や,禅院の建築,庭園の造型をはじめ,水墨,絵画,墨跡,工芸の生産のほか,それらを使用する日常生活の特殊な儀礼を生む。栄西が宋より茶を伝え,《喫茶養生記》を著して,その医薬としての効果を説いたことも,後になると茶道の祖としての評価を高めることとなる。…

※「臨済録」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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