臨海学校・林間学校(読み)りんかいがっこうりんかんがっこう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「臨海学校・林間学校」の意味・わかりやすい解説

臨海学校・林間学校
りんかいがっこうりんかんがっこう

夏季を中心に、主として都会地の児童生徒海岸山間景勝地に引率して宿泊させ、水泳訓練、各種の野外活動などによる心身鍛練や、集団生活の指導をすること。そのために使用する建物などをさすこともあり、夏季施設ともよぶ。

[井上治郎]

歴史

臨海学校林間学校は、最初は身体虚弱児を対象として、その健康の回復を図る目的で始められた。ヨーロッパの場合、すでに19世紀の中ごろには、イギリスやドイツを中心にかなりの普及をみている。それが広く一般の子供たちを対象とするようになるのは、1853年デンマークのコペンハーゲンで実施されてからである。また、それが特別な施設をつくって行われるようになったのは、1904年のドイツのシャルロッテンブルクの林間学校が最初で、同種の試みは数年のうちに他の各国にも広がっている。

 日本においては、明治40年代に東京の下谷区(現台東(たいとう)区)や本郷区(現文京区)が実施したのが最初で、これが全国に普及し、またその対象もいち早く一般児童へと拡大された。この時期の文部省の調査によると、すでに1920年(大正9)には、夏季施設をもたない府県は皆無であると報告されている。

[井上治郎]

問題点

わが国の臨海学校や林間学校は、小学校高学年および中学校の下学年の一般児童・生徒を対象に、2、3日の日程で実施される形のものが主流をなしてきた。急激な都市化の進展に伴って、自然に触れる機会を奪われつつある都会地の学校の児童・生徒にとって、山野海浜で存分に活動することのもつ教育的な意義は大きい。ただ、それらのほとんどは夏季休業中に企画されるため、正規の教育課程に位置づけにくいことや、これとの関連で、費用の負担が困難な家庭の児童・生徒のなかに不参加者が生じやすいなどの問題点も指摘できる。

[井上治郎]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例