膀胱癌(読み)ボウコウガン(英語表記)bladder cancer

デジタル大辞泉 「膀胱癌」の意味・読み・例文・類語

ぼうこう‐がん〔バウクワウ‐〕【×××癌】

膀胱粘膜に発生する癌。血尿がみられる。アニリン系染料・ベンジンなどを扱う職業ヘビースモーカー発生率が高いといわれる。

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精選版 日本国語大辞典 「膀胱癌」の意味・読み・例文・類語

ぼうこう‐がん バウクヮウ‥【膀胱癌】

〘名〙 膀胱粘膜に発生する癌腫(がんしゅ)。血尿、頻尿排尿障害疼痛などの症状を伴う。〔癌(1955)〕

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改訂新版 世界大百科事典 「膀胱癌」の意味・わかりやすい解説

膀胱癌 (ぼうこうがん)
bladder cancer

膀胱粘膜上皮に発生する悪性腫瘍で,膀胱腫瘍の90%以上を占める。膀胱腫瘍には,このほかに悪性腫瘍である膀胱肉腫や良性の平滑筋腫などがあるが,きわめてまれである。また良性の膀胱乳頭腫は,再発をくり返す性質などから,臨床的には悪性の膀胱癌に準じて取り扱われている。50~60歳代の男性に多く,尿の発癌物質が関与していると考えられている。ベンジジンナフチルアミンのような芳香族アミンに長期間接触する者に膀胱癌が多発することが知られており,このような職業性膀胱癌は色素工場従事者に多くみられる。一方,自然発生の膀胱癌にはアミノ酸の一種であるトリプトファンの代謝産物が発癌に関与しているとされているが,必ずしも確定しているわけではない。症状は血尿が最も多い。血尿のみで他の症状をまったく欠くことが多く,これを無症候性血尿と呼び本症に特有である。腫瘍が原因となって膀胱炎を合併し,頻尿や排尿痛をくり返すこともある。腫瘍が進行すると,尿管の膀胱開口部を圧迫,閉塞し水腎症腎盂腎炎(じんうじんえん)を起こしたり,リンパ節や肺,肝臓,骨などに転移して,神経痛,肺炎,全身衰弱などが起こる。診断には膀胱鏡検査が行われる。このほかにX線検査や超音波検査を行い,腫瘍がどの程度進行しているかを知ることが治療のうえに大切である。小さい初期のものでは,膀胱を切開することなく,尿道から特殊な膀胱鏡を挿入し電気メスで切除したり焼灼するだけで治癒する。大きいものや進行したものでは,下腹部を切開して膀胱を腫瘍とともに一部切除したり,膀胱と前立腺を一塊として全部摘出する膀胱全摘出術を行うこともある。膀胱全摘出術を行った場合は,小腸などを用いた人工の膀胱を作り,これを通して腹壁から直接尿を出さなければならない。リンパ節や肺,肝臓に転移している場合は,放射線療法や抗癌剤の投与を行うが根治は困難である。本症は一度治癒しても再発しやすいので,定期的な検査を続けることが必要である。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「膀胱癌」の意味・わかりやすい解説

膀胱癌
ぼうこうがん
bladder cancer

尿路に発生する癌のうち,最も多い。 50~60歳代に多く見られ,患者の男女比は3~5:1と男性に多い。発生原因は不明だが,染色,プラスチック,化学工業等に携る人に多いとの説もある。自覚症状としては血尿が最も多く見られ,頻尿,排尿時の痛み,残尿感などと続く。診断には,尿道内に管を挿入する膀胱 (ぼうこう) 鏡検査が最もよく用いられる。治療法は外科的手術が主流。進行した膀胱癌では膀胱全摘,尿道切除,リンパ節の郭清を行ない,男性の場合は精嚢,前立腺も摘除することになる。そのため通常の排尿はできなくなり,人工膀胱などの尿路変更が必要となる。最近では尿道を通して行なう経尿道的腫瘍切除術も多く行なわれるようになってきた。いずれにせよ早期診断,早期治療が重要であり,血尿あるいは膀胱炎を繰り返すような中高年者では,膀胱鏡検査等を受けることが望ましい。

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百科事典マイペディア 「膀胱癌」の意味・わかりやすい解説

膀胱癌【ぼうこうがん】

膀胱腫瘍(しゅよう)

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世界大百科事典(旧版)内の膀胱癌の言及

【癌】より

…インドなど,タバコやビンロウの実や葉をかむ習慣のある地方では口腔癌が多発している。エジプトやイラクに膀胱癌が多いのは,エジプトジュウケツキュウチュウ(住血吸虫)症がその誘因をなしている。
【癌の発生と成長】
 癌はしばしば,診断を受けてから1年も経ないうちに命を奪うので,癌細胞がいったんできたら非常に急速に大きくなるように思えるが,それはかなりのところ誤解である。…

【職業癌】より

…皮膚癌は,鉱油や石炭熱分解産物取扱い者やX線取扱い者にみられる。肺癌起因物質にはヒ素,タール,ピッチ,クロム塩(とくに3価クロム),ニッケルが,膀胱癌起因物質にはα‐,β‐ナフチルアミン,ベンジジンがある。近年注目されているのはブレーキライニングや建築用スレート,保温材などの石綿(とくにクロシドライト)による肺癌と胸膜,腹膜の中皮腫である。…

※「膀胱癌」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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