脇・腋・掖(読み)わき

精選版 日本国語大辞典 「脇・腋・掖」の意味・読み・例文・類語

わき【脇・腋・掖】

〘名〙
① 胸の側面で、腕のつけねのすぐ下の部分。わきの下。
※彌勒上生経賛平安初期点(850頃)「世尊の膊(かたわたり)(わキ)は悉く皆充ち実てり」
衣服で①に当たる部分。
※十巻本和名抄(934頃)四「 方言注云〈音与掖同 古呂毛乃和岐〉衣服也」
③ (「傍・側」とも書く) 事物のかたわら。側面。そば。横。
※霊異記(810‐824)上「片つ方の脇(ワキ)の門に将(ゐ)て至り〈興福寺本訓釈 脇 和支〉」
※浮世草子・世間娘容気(1717)二「脇(ワキ)からむしゃうに笑ひ出して」
④ 主なものの次に位置し、その補助をするもの。
(イ) 春宮坊(とうぐうぼう)帯刀(たてわき)の一つ。部領(ことり)の次位。〔江家次第(1111頃)〕
(ロ) 平安時代、相撲人(すまいびと)中の最高位である最手(ほて)に次ぐ位の称。今の関脇にあたる。ほてのわき。ほてわき。脇手。
※西宮記(969頃)四「最手額田成連、与腋宇治部利里、決勝不
(ハ) (ふつう、片仮名で「ワキ」と書く) 能楽で、主役(シテ)の相手を演ずる役。また、その人。脇師。古くはツレなどシテを助ける役を総称した。脇の仕手
※申楽談儀(1430)序「わきは、とよ、直(すぐ)成る為手なり」
(ニ) 浄瑠璃で、太夫の次に位する語り手。また、その役。脇語り。脇太夫
※今昔操年代記(1727)上「此時天王寺の五郎兵衛と云ふ人〈竹本筑後こと〉理兵衛ワキをつとめ、初て床になをってかたる」
(ホ) 邦楽で、主奏者(タテ)に次ぐ人。また、その役。脇唄、脇三味線、脇鼓、脇太鼓などと称する。
(ヘ) 一般に、主たるものに対する次のもの。
※多聞院日記‐天正一一年(1583)四月二七日「笠間より茶上、はしり一斗五升つつ、わき六升つつ」
⑤ 物事の終わったあと。
日葡辞書(1603‐04)「ダンギノ vaqi(ワキ)。または、ゴミサノ vaqi(ワキ)
⑥ (「わきになる」「わきになす(する)」の形で使うことが多い) 二の次(つぎ)のもの。あとまわし。そっちのけ。のけもの。
※浮世草子・好色一代女(1686)一「位とる事は脇(ワキ)になりて、機嫌をとる事になりぬ」
⑦ 「わきのう(脇能)」の略。
※申楽談儀(1430)永享元年興福寺能「一乗院にて、円満井、魚崎(ゆふざき)、両座立合の時、わきは鬮なり」
⑧ 「わきく(脇句)」の略。
※虎明本狂言・連歌盗人(室町末‐近世初)「是にゐまする者が、わきをいたひてござる」
近くの別の場所。また、別の人。よそ。ほか
※浮世草子・近代艷隠者(1686)四「実(げに)は牛飼童薪かづく女迄も、脇(ワキ)の里より堅(かしこ)き様も見へ侍ると言に」
真景累ケ淵(1869頃)〈三遊亭円朝〉三〇「年頃で無理ぢゃアねえから他処(ワキ)へ寄ったか」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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