綱引・綱曳(読み)つなひき

精選版 日本国語大辞典 「綱引・綱曳」の意味・読み・例文・類語

つな‐ひき【綱引・綱曳】

〘名〙
① 物に綱を結びつけて引くこと。
② 人が二組に分かれ、一本の綱を両方から引き合って勝負を争い、多く引きこんだ方を勝とするもの。祭礼神事として行なわれる場合、勝った組にその年の福がおとずれるとされた。また、運動会や、子どもの遊戯としても行なわれる。《季・新年》
※寺訴引付日記‐応安六年(1373)正月「一広瀬関所下知正文遣之。於今者関所悉本復歟。綱曳以下事、被申日時之後、武家厳密可沙汰之由申之」
※俳諧・新類題発句集(1793)春「綱曳や山三井寺の領ざかひ〈冬秀〉」
③ 比喩的に、一つのものを二者で取り合って争うこと。「オリンピック開催地誘致のつなひき」
人力車で、急ぎの場合にかじ棒に綱をつけて、さらに別の人が先引きすること。綱引車。つなっぴき。
※歌舞伎・富士額男女繁山(女書生)(1877)序幕「綱引(ツナヒキ)を附けて威勢よく、直に吉原へ持込みませう」
⑤ 遊里通いの駕籠屋
※評判記・色道大鏡(1678)一「綱引(ツナヒキ) 遊客の乗れる籠を出す宿をさしていふ」
牛馬などが、引かれる方に寄るまいとして、さからうこと。
拾遺(1005‐07頃か)雑賀・一一八五「ひきよせばただにはよらで春こまの綱引するぞなはたつときく〈平定文〉」
⑦ 強情をはること。意地をはること。

つな‐ひ・く【綱引・綱曳】

〘自カ四〙
① つながれた綱を引く。つないだ綱を引っぱる。
源氏(1001‐14頃)若菜下「かのおぼえなかりし御簾のつまを、猫のつなひきたりし夕のことも」
② 牛馬などが、引かれる方に寄るまいとして、さからう。
蜻蛉(974頃)中「あまたとしこゆる山べにいへゐしてつなひく駒もおもなれにけり」
③ すなおに従おうとしない。意地を張る。強情を張る。すねる。
※源氏(1001‐14頃)帚木「あらためむとも言はず、いたくつなひきて見せし間に」

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